今年最初のお薦め書籍は、一流のデザイン書であり、かつ一流のビジネス書でもある、
「ウラからのぞけばオモテが見える」〜佐藤オオキ nendo 10の思考法と行動術〜(佐藤オオキ 川上典李子 共著 日経デザイン編 日経BP社 2013年10月21日発行 1800円＋税)をご紹介さいていただきますぜよ。
エルメス、ルイヴィトン、バカラ等々、世界の一流ブランドから依頼が殺到し、常時250を超えるプロジェクトに挑み、いまや日本を代表する世界的デザイナーとなった佐藤オオキさんは、昨年11月にNHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」(
http://www.nhk.or.jp/professional/2013/1125/)にも登場されちょって、こぢゃんと面白い番組やったがやき。
ほいたら昨年末に書店でたまたまこの書籍を見つけたき、こりゃ面白そうやっちゅうことで思わず購入したがよ。
ユニークなデザイン書やと思うて読みはじめたところ、チョコッと読んですんぐに、「こりゃ一流のビジネス書や！」と気づいたがやき。
それっぱあビジネスに役立つ智恵やヒントが満載で、まっこと蔵元のワシが読んだち、ビジネスのヒントを足るばあいただけたがよ。
わずか2ページの「はじめに」を読みゃあ、その理由がすんぐに分かるがやき。
佐藤さんは、デザインたぁ問題解決のための「新しい道」を見付ける作業やっちゅうがよ。
さらに、そんな「デザイン」は、「デザイナー」だけのためにある知恵やないっちゅうがやき。
こりゃあ、どんなに退屈と思われる単純作業にも当てはめることができるっちゅうがよ。
たとえば、時間内にゴミを10袋捨てにゃあならんとする。
同時に2袋しか片手に持てんゴミ袋をどうすりゃあ3袋持てるようになるがか？
どういう持ち方をしたら疲れにくいか？
何か道具を使うことで、まっと簡単にゴミ袋を移動させられんか？
これらあの工夫や思考はすべて「問題解決のための新たな道」を見付けろうとしゆうわけやき、このプロセス自体が立派なデザインやっちゅうがやき。
それによってチビッとでも快適に、あるいは早く。それとも、他の人よりか多くのゴミを同時に捨てられたとしたら、そりゃあ新たな価値を生み出したことにほかならんっちゅうがよ。
ほんで本書は、そんな「問題解決のための新たな道」の見付け方とその活用方法を2つの章にまとめたもんやっちゅうがやき。
第1章は具体例を交えもって「10の思考法」として整理し、第2章は「nendo」(
http://www.nendo.jp/)っちゅうデザインオフィスの基本的な考え方や、日々どのようにプロジェクトに取り組みゆうかを「行動術」として綴ったもんやっちゅうがよ。
【第1章:nendoの思考法】
〈1〉「面」で考える
「点」やのうて「面」的に考えることで、企業の特性、ブランドの力をより強う発していくことができるっちゅうがやき。
商品を個別にとらえたり、細かな差別化に躍起になっちゃあイカンっちゅうがよ。
「葉」を1枚1枚デザインすりゃあ、一見すりゃあ木が変わったかのように目にゃあ映るけんど、実際は本質的な部分は何ちゃあ変わってないがやき。
「幹」あるいは「根」をデザインすることで、その後にデザイナーの手を借りいじゃち、そっから生えてくる葉はおのずと魅力的なもんになっていくがやないかっちゅうがよ。
ほんじゃき、経営とデザインは決して切り離すことができんっちゅうがやき。
根幹をデザインすることは、企業のブランドアイデンティティーを確立し、面的に発信していくことにつながるっちゅうがよ。
エステーの電池式自動消臭スプレー「自動でシュパッと消臭プラグ」の、本体やパッケージのフルモデルチェンジの例を挙げてもうか。
香りをそろえ、パッケージのアイコンや色使いをある程度統一するだけやち、コレクションに見えてくると、佐藤さんは言うがやき。
おんなじ考え方から、カタログ写真の撮り方も共通するようにしたっちゅうがよ。
このようにコレクションとしての関連性を持たせることで、エステーとしてのアイデンティティーが浮かび上がるだけやのうて、アイテム1つひとつの強みをはっきり打ち出すためのプラットフォームを形成することができるようになったっちゅうがやき。
エステーの鈴木貴子代表執行役社長は、「本社会議室をミュージアムにしょうっちゅう提案もその1つで、記者会見の会場デザインや販売什器のデザインもお願いしちょります。製品の意図を伝え、理解してもらうためのコミュニケーションはブランド力の鍵となりますが、会議室がミュージアムとなったときの社内の衝撃は、何かを壊し、変えていこうとする弊社の新たな一歩の始まりでもあったのやと思います。」っちゅうて、語られちゅうがよ。
〈2〉一歩「下がる」
一歩「下がる」思考法たぁ、自分らあの力で圧倒するがやのうて、クライアントの能力や商品力を最大限に生かすために一歩下がるっちゅう、合気道のような手法やっちゅうがやき。
声高に主張し、声を張り上げるだっけが賢明な伝え方やないっちゅうがよ。
重要ながはメッセージが何であるか、また、どのような環境でどう伝えていくがか。
「どういたち気になる」製品として伝えるために一歩下がってみる、声を小そうしてみる・・・ちゅうデザインの手法。イソップ童話の「北風と太陽」にも似いちゅうっちゅうがやき。
こりゃあ多くの商品にあふれた環境じゃあとくに、効果を上げることができるっちゅうがよ。
たとえば、ロッテの口臭除去ガム「ACUO(アクオ)」。
売り場の棚を意識した営業的視点や他社製品との差別化をはかるためにゃあ、派手で目立つパッケージになりがちやけんど、佐藤さんは「20代、30代の若者が持っちょったち恥ずかしゅうないパッケージ」を考え、「ギラギラ感を抑えて一歩下がってみる」方法をとったっちゅうがやき。
バッグの中や引き出しに入っちゅう佇まいを意識したっちゅうがよ。
購入するまでは0.2秒の接点やけんど、その後何日間あるいは何週間か一緒に過ごすことに配慮したデザインを目指したっちゅうがやき。
〈3〉「違和感」を生む
日常のなかでひっかかってくるもん、違和感を感じるもん・・・全身が「フィルター」のイメージやっちゅうがよ。
日常生活のなかで空気や水のように身体を通り抜けていく要素がある一方で、フィルターにひっかかってくるわずかな差異のようなもんがあるがやき。
ひっかかったもんが小さけりゃあ小さいほど良うて、「すごい」もんである必要はないっちゅうがよ。
微細なもんらあを丁寧に集めることで形作られるもん、これが自分にとってのデザインやと、佐藤さんは言うがやき。
形や色っちゅう目に見えるもんやのうて、その背後にあるちんまい物語を伝えていくことができんやろうかといっつも考えゆうっちゅうがよ。
nendoが考えるデザインたぁ、日常のなかのちんまい気付きであり、ちんまい違和感のようなもんをできるだっけ崩すことのう、掬い上げていき、人と共有すること。日常生活のなかにちんまい非日常がちりばめられちゅう状況がホンマの意味での豊かさやと思うっちゅうがやき。
すなわち「違和感」はnendoのデザイン手法の中枢ともなる思考で、nendoを理解するうえで、最も大切なキーワードとなるもんやっちゅうがよ。
ほかの9つのキーワードも、それぞれに違和感を作る機能を含んじゅうとも理解できるっちゅうがやき。
また、がんばりゃあがんばるばあアイデアは逃げていってしまうっちゅうがよ。
目的意識を持つ、つまりアンテナをはってしまやあ、自分自身の周囲にバリアを作ることになってしまい、周りを見えにくうしてしまうっちゅうがやき。
こりゃあまっこと意外で、正反対にアンテナをはっちょった方が良さそうやと思うけんど、逆やっちゅうがよ。
周囲の状況を認識しもって次の瞬間を推測するサッカー選手らあの周辺視と似いちゅうと書いちゃあって、ナルホドと納得したがやき。
�‖犇�なルーティンワークを楽しむ。
�△�んばってアイデアを探さん/アンテナをはらん。
�Ｊ�事に焦点を絞らん。
佐藤さんのやり方は、通常デザインにかかわる人らあが心がけろうとしゆうことと、まったく逆ながよ。
そんな「人が感じる何かは日常にこそある」っちゅうnendoの持論を踏まえたプロジェクトとして、佐藤さんが空間プロデューサーとしてかかわった「スターバックス エスプレッソ ジャーニー」(3週間の期間限定店舗)があるがやき。
こりゃあスターバックスの通常の店舗とも違う、日々の生活のなかに「ちんまいひっかかり」を生み出す試みやったっちゅうがよ。
ここで佐藤さんが考えたがは、「1冊の本を選ぶ感覚と、1杯のコーヒーを飲んでくつろぐ感覚は似いちゅうがやないか」っちゅうこと。
ちなみに来場者の多い日にゃあ3時間待ちとなり、3週間の開催で約2万人もの来店客数を記録したっちゅうがやき。
書棚から1冊の本を選んでカウンターに持って行きゃあ、それがドリンクのオーダーになるっちゅうがよ。
本を1冊手に取ることがコーヒーにつながるっちゅう、日常生活にゃあない体験ながやき。
そのことを味わうために、多くの人がわざわざ足を運んでくれたっちゅうがよ。
〈4〉均衡を「崩す」
潜在的な問題を顕在化させるために佐藤さんは、「均衡を『崩す』」ことがあるっちゅうがやき。
ある企業における「崩すべき均衡」は、「凝り固まってしもうちゅう既成概念」かもしれんっちゅうがよ。
事例としちゃあ、はるやま商事の「HAL-SUIT」があるっちゅうがやき。
店舗のフォーマットやノボリや広告のあり方など、既存のルールが多数ある紳士服量販店業界の常識を破った店を作り、売上高10％増、客単価40％増以上になったっちゅうがよ。
〈5〉見せたいもんは「隠す」
見せたいもん、伝えたいもんをあえて隠す。
そうすることで伝わりやすいストーリーを作る。
佐藤さんが空間デザインとプロダクトデザインの双方で用いる手法やっちゅうがやき。
一部の情報を隠すことで興味を喚起さいて、人々が対象に積極的にかかわり、喜びとともに空間や製品を体験してもらえるキッカケを作ることができるっちゅうがよ。
�〇訶世琉貮瑤鮗廚襪海箸如∋訐�をより遠くに導く。
�⇒彖任琉貮瑤鮑錣�落とすことで、メッセージをより明快にする。
��周囲を隠してマスキングすることで、対象物を強調する。
�と薪召気擦襪海箸如�伝えるべき表側の情報に目を向けてもらう。
たとえば、渡辺教具製作所の地球儀「corona」は、国境や地名らあの情報を見えんようにして、その精度の高さをアピールしつつインテリア性を高め、インテリアショップや海外からの注文も増えたっちゅうがやき。
〈6〉「ゆるめ」につくる
nendoはたしかに「完成形を限定せんモノ作り」の大切さをよう口にするっちゅうがよ。
そのつど状況を把握し、クライアントの立場を理解しもって、「手を加えすぎんデザイン」を目指すっちゅうがやき。
たとえばコクヨファニチャーのオフィス家具「オフォン」と「ブラケッツ」は、「変えられる」状況を重視し、組織の成長に沿って家具の組み合わせや配置が変えられるようなもんにしたっちゅうがよ。
使う人がそのモノにかかわる時間や頻度が高くなるばあ、モノとの間でさまざまな「物語」が生まれ、魅力が増大していく。
変化を取り入れるべく「ゆるく」まとめられたデザインたぁ、人々にそのつど鮮度の高い楽しみ方を提供することになるっちゅうがやき。
ユーザーにかかわることのできる余地や変化を残しちょくっちゅうんは、あらゆる分野で忘れちゃあならん視点ながぜよ。
〈7〉とにかく「集める」
細部と全体を結び、プロダクトと空間を結ぶことによる一体的な居心地の良さを生むがが、ある特定のモノを徹底して集積しもって全体を作る手法やっちゅうがよ。
とにかく「集める」がやっちゅうがやき。
帽子デザイナー平田暁夫さんの「ヒラタノボウシ」展にゃあ、この「集める」考えが生かされちゅうっちゅうがよ。
不織布で量産された真っ白い帽子を4000点も雲のように浮かべ、その間を自由に歩きもって、手作りの帽子を鑑賞するっちゅう趣向ながやき。
量産品を集積することによって、平田さんの手で一点ずつ作られた精妙な作品が際立って見えてくるようにしたいと考えたっちゅうがよ。
〈8〉「休み時間」に休ません
使われてない状態を観察すること、すなわちモノの「休み時間」を考える作業も、nendoのデザインにゃあ欠かせん手法となっちゅうっちゅうがやき。
モノ作りをする際、デザイナーはそのモノが「使用中」の状態を強う意識しがちやけんど、実は使われちゃあせん時間の方が長かったりするっちゅうがよ。
モノの「休み時間」とも呼べる、あんまり人々の役にたってない状態を再考しちゃることで、新たな展開が見えてくる気がするっちゅうがやき。
たとえば、カレーチェーン「CoCo壱番屋」のキャンペーン用スプーンは、「フォレスト・スプーン」と名付けられちゅう通り、樹木の形をしちょって、コップに何本も入った状態は、まるで林や森のようながよ。
スプーンが集まるばあ、木々の風景が広がるっちゅうことながやき。
〈9〉「他人丼」を見つける
普段はつながってないと思われるもんを共通項によってつなげる手法を、佐藤さんは「他人丼」と呼ぶっちゅうがよ。
縁もゆかりもない(と思われちゅう)2者間を直に接続することで新しい価値を生み出すものやっちゅうがやき。
「一歩引く」手法は引き算、「集める」が掛け算、「休み時間」を割り算とすりゃあ、「他人丼を見つける」にゃあ因数分解と足し算が用いられちゅうっちゅうがよ。
たとえば、チョコと鉛筆の「他人丼」。
パティシエの辻口博啓さんとのコラボレーションとなった「chocolate-pencils」で、佐藤さんはペン・トレー形の皿をデザイン、辻口さんはチョコレートケーキに加えてカカオの濃度が異なる「チョコレートの鉛筆」数本を作ったっちゅうがやき。
ケーキを味わうときにゃあ鉛筆削りで削ったチョコレートをトッピングするっちゅうがよ。
〈10〉そこにあるもんを「使いまわす」
制約があるきにこそ発想が飛躍することがあるがやき。
制約を変えられん枠や壁として嘆くがやのうて、可能性を生む歓迎すべきバネと考えた結果、佐藤さんが切り札とする手法があるっちゅうがよ。
「使いまわす」。誤解を避けるために断っておきゃあ、身近なもんを極限まで使い込むっちゅうことじゃあ、もちろんないっちゅうがやき。
作る側が楽をするための秘策でもないっちゅうがよ。
適した要素を適した形で、無理のう活用する。
「すでに存在するもんをあてはめ、解決する」手法やっちゅうがやき。
金沢21世紀美術館での金沢・世界工芸トリエンナーレのプレイベントと展覧会で用いたがは、農業用ビニールハウスや市販の観葉植物用温室キットやったっちゅうがよ。
後者にゃあ棚も保護用ガラスも電源コンセントもあらかじめセットされちょったっちゅうがやき。
専門家やのうたち組み立てや解体作業を実行できる点は、限られた予算やスケジュールにおいて、大きなメリットとなるっちゅうがよ。
【第2章:nendoの行動術】
デザイン事務所の経営にゃあ常に大きなジレンマが付きまとうっちゅうがやき。
そりゃあ「デザインをかんばりゃあがんばるばあお金にならん」っちゅう事実ながよ。
ここじゃあ詳しゅうは紹介せんけんど、このジレンマと真っ向勝負しょうっちゅうんがnendoやっちゅうがやき。
あくまでアイデアで勝負をすることでほかのデザイン事務所と差別化を図りもって、なんとか経済的に安定させ、優秀な人材の確保と育成を実現する方法はないやろうかっちゅう考え方から生まれたががnendoやっちゅうがよ。
品質の高いデザインを安定的に供給することを目的にした、1つの考え方、あるいは「プラットホーム」のような場所を目指しちゅうっちゅうがやき。
まわりを見渡すと、アイデアの半分も実現できんと終わってしまうプロジェクトがあまりに多いがも事実やっちゅうがよ。
なんでやろう？そんなことを考えるうちに、残りの(アイデア以外の)8〜9割の業務を見直し、次の3ステップを確実に行わにゃあアイデアをフル活用することができんことに気付いたっちゅうがやき。
�．▲ぅ妊△鮗存修垢襪燭瓩隆超�や状況を「耕す」業務
�▲▲ぅ妊△鬟�ライアントとともに「育てる」業務
��アイデアを実現するために「収穫する」業務
この考え方において、アイデアは最も重要な「種」であると同時に、しょせん種でしかないっちゅうがよ。
この「耕す」「育てる」「収穫する」を安定して行うことさえできりゃあ、逆の言い方をすりゃあ、種がずば抜けて優れたもんやのうたち、プロジェクトを成功へと導くことができるっちゅうがやき。
おおの！タマルカゆうばあブログが長うなってしもうたがよ！
けんど、それっぱあこの書籍が、あらゆるビジネスパーソンにとったち、こぢゃんとヒントが満載やっちゅうことながやき。
「ウラからのぞけばオモテが見える」・・・こぢゃんとお薦めしますぜよ！
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