ほんで今回のマーケティング講座のゲストスピーチは、ナント！かのハーレーダビットソンジャパン（株）の奥井俊史社長ながよ。奥井社長が惜しげものう、ハーレーダビットソンジャパン（以下HDJ）の「ライフスタイルマーケティング」を講義してくれたがやき。
まず、オートバイ業界の話し。競合者は巨像、HDJは蟻やと、奥井社長は言うがやき。ホンダ、スズキ、カワサキ、ヤマハらあの企業は、みんなあ売り上げ年商が兆単位の大企業で、対するHDJはこんまい中小企業やと言うがよ。しかも、バイク業界は、1982年以来、減少の一途をたどる「負け犬」業界。24年間でナント全体のパイは5分の1になったっちゅうがやき。
さらに価格差。他のバイクメーカーは100万円代がメイン。HDJは200万円代がメイン。しかもメーカーやないき、アメリカ本社の商品を仕入れて売るしかないし、とても価格じゃ勝負にならんがよ。それやに業界は「なめくじ業界」と言われちょって、値引き値引きで溶けてのうなる業界と言われちゅうがやと。
その上、流通チャネルも最悪。いわゆる街の自転車屋さんに毛がはえたみたいな、家族経営の中小零細小売店で、さらにオープンチャネルやき、その取引先ですら、他社のバイクも併売しゆうっちゅうがよ。
こんな三重苦、五重苦の下で、奥井氏は1990年に社長に就任。アメリカ本社の至上命令は、「ブランドを構築しもって、売上を伸ばせ！」、「成長せんかったら死あるのみ！」。そんな中で生存策を模索した奥井社長は、居直ることが唯一最善の策やとして、居直りマーケティングを提唱するがやき。まず、比較からものを考えんこと。差別化らあて考えんと言うがぜよ。差別化っちゅうんは、余裕があるき出来ることやと。さらに価格で売ろうとせんこと。HDJにゃあ、数量インセンティブマージンらあて存在せんと言うがぜよ。さらに営業マンらあにも、ノルマは一切存在せんっちゅうがやき。そうして身の丈経営を実現していこうっちゅうがぜよ。
とにかくHDJはメーカーやないき、「与えられたもんを売る」っちゅう立場しかないがよ。商品上は明確に「プロダクトアウト」。こりゃあどうしょうもない。けんど、マーケティングではHDJが主体性を持って展開する「マーケットイン」が基本姿勢やと、奥井社長は言うがぜよ。そうして、ハーレーの歴史、文化、伝統を尊重して、日本で体系化された「ライフスタイルマーケティング」が誕生するがやき。
まず、奥井社長は、オートバイの存在意義を問い直すこと、再定義することから始めたがやと。考えてみりゃあ、ハーレーのバイクは、ソバ屋の配達にも、通勤にも、そういう交通手段にゃあ一切使われちゃあせんがよ。つまるところそりゃあ楽しむため、趣味のモノ、もっと分かりやすう言やあ、オモチャやっちゅうことながやき。ハーレーは「遊と楽の美」やと。それは「LOOK」「SOUND」「FEEL」やないかと。そんな具合に絞り込んでいったっちゅうがぜよ。
そうして生まれた「ライフスタイルマーケティング」。明確になっちゅうとは限らんカスタマーの価値観や生活基準に対し、ハーレーの世界（文化的価値）を具象化して提示していくっちゅうことながよ。モノのライフスタイルからコトのライフスタイル、そして心のライフスタイルへの変化を目指すっちゅうがやき。具体的にゃあ、「ハーレーダビットソン・ライフスタイルブック」に、明快に掲載されちゅう「10の楽しみ」。それは以下の通りながよ。
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各地で開催される様々な試乗会。「生涯マイレージプログラム」や「走りの殿堂」入りのサービス。様々なツーリングのプログラムらあを準備して、乗る楽しみを体感してもらうがよ。
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仲間らあとともに走る、「ハーレーオーナーズグループ」（会員数は世界130ヶ国で100万人以上、日本では約33000人が所属。）。ハーレーを通して絆を深める「ペアライドパラダイスパーティー」や「クリスマスパーティー」。そして年に一度の最大イベント「富士ブルースカイヘブン」。老若男女を問わん、ハーレーファン同士ならではの絆が生まれる、様々な出会いの場が用意されちゅうがよ。
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9000点を超えるパーツやアクセサリーのラインアップ。カスタム相談のためのデザインセンター。カスタムコンテストらあのカスタムイベントの開催。世界でたった1台しかない、自分の分身ともいえるハーレーを創りあげる悦びをサポートしてくれるがぜよ。
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年に2回発行の分厚い「ウェア＆グッズカタログ」。さらに「ウェア＆グッズ専門店」も全国4ヶ所に設置して、着こなす楽しみもサポートしてくれるがやき。
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ハーレーに関する最新情報が満載のホームページ（http://www.harley-davidson.co.jp/）や会員限定のホームページ。ファーストエイドセミナーやメンテナンスセミナー。そしてヒストリーブック。100年を超えるハーレーの歴史や文化を極める楽しみも、様々なサービスでサポートしてくれるがよ。
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カードやローンで買い方が選べ、見て、乗って、数百台の中からじっくり選べる特別イベントらあも開催しゆうがぜよ。
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愛車のコンディションを保つために、様々なメンテナンス用品やツールキットらあも、バッチリ準備されちゅうがやき。
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サーキットで磨かれた高性能パーツ群の準備、ドラッグレースやダートトラックレースの開催など。
��海外交流
世界各国でハーレーをレンタルすることができ、38ヶ所の拠点からスタートする海外ツーリングも可能ながやき。
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毎年2回、日本全国のハーレーの正規販売網ガイドブックを発行。なんと全ての店の社長からメカニック、全スタッフの名前から顔写真まで掲載しちょって、全国どこじゃち安心のサポート体制を整えちゅうがやき。さらに様々な独自のCSプログラムもバッチリ準備されちゅうがぜよ。
これらの「10の楽しみ」を、「3K」（キツイ・キタナイ・キケン）と言われ、オールドエコノミーの代表とも言えるバイク小売店で展開し、成功さいたその執念。そりゃあ凄まじいもんがあっつろう。彼らのビジネスドメインを転換させ、サービスレジャー産業として、ソフトなニューエコノミー（価値売業）に、見事に業態転換さいたがやき。こりゃあ酒屋じゃち、おんなじようなもんやき不可能なこたぁないと、おおいに勇気をもらえ、鼓舞されたがぜよ。
ほんで、HDJ最大のイベント、今年6月10〜11日に開催された「第8回富士ブルースカイヘブン」のDVDを観せてもうたがやき。とにかく大人から子供まで、あらゆる年代の人たちが24000人集まって、様々なイベントを心から楽しみゆう姿が、まっこと印象的やったがやき。
この大イベントの中に、「ライフスタイルマーケティング」、「10の楽しみ」の全てが、徹底的に分かりやすう、目で見てすっと分かるように、見事に展開されちゅうがぜよ。まるで、まっことディズニーランドかと思うたばあながよ。ちなみにこのイベント、たった2日間のために、富士スピードウェイを8日間貸し切りにし、準備に3日、片付けに2日かけちゅうがやと。さらに、おんなじことをやりよったら飽きられるき、必ず毎年内容を変えゆうっちゅうがやき。恐れ入ったがぜよ。
ほんで、経営的に言やあ、HDJの使命は、新規顧客の開拓と既存顧客の維持の両立やと、奥井社長は言うがやき。ほんで、その結果としての、持続する成長の維持・実現やと。その言葉の通り、HDJの新規顧客率は80％、顧客維持率は67％っちゅう驚異的な数字を叩き出しちゅうがよ。
さらに奥井社長は、顧客を囲い込むことらあてできんと言うがやき。まず、囲い込むっちゅう言葉自体が、顧客をモノ扱いしちゅうと。それに、よう考えてみりゃあ、自分の親や奥さん、子供らあですら、囲い込むこたぁ不可能やに、顧客を囲い込むことらあてできるわきゃあないやいかと、奥井社長は言うがぜよ。ほんじゃきHDJじゃあ、「囲い込み」じゃのうて、「Delighteful relationshipー絆」やと。顧客との絆づくりこそが大切やと言うがやき。その結果として、HDJの顧客満足度、CSIはこじゃんと高うて、数年前と比較して、「非常に満足」が40％から65％に上がっちゅうっちゅうがぜよ。
さらに奥井社長は、こじゃんと参考になる、様々なお話しをしてくれたがやき。「ライフスタイルマーケティング」を成功させるためにゃあ、ライフスタイルを演出する沢山の商品群が必要やとして、「装う楽しみ」も重要なファクターやと、ハーレーのファッションショーらあも開催しゆうがやと。
また、これからは高齢者がターゲットとしてさらに重要になるき、「豊かな時を楽しむ達人」っちゅうコンセプトで、「アクティブエルダー」っちゅう商標を押さえ、そのプログラムも準備しゆうっちゅうがやき。ほんで、50歳を過ぎた顧客にアプローチするためにゃあ、50歳からアプローチを始めるようじゃあ遅すぎるとも言うがぜよ。
また、「ライフスタイルマーケティング」にとっちゃあ、店舗・店頭は極めて重要やき、リテールセールスのエンターテイメント化が必要やと。これを「リテールテイメント」と名付けちゅうがやき。
また、どんなことやち、楽しいことに変えられるし、そうせにゃあ生活者にゃあ伝わらんとも言うがよ。例えば、交通安全についちゃあ、こじゃんと重要やけんど、生活者にとっちゃあ「重い」し、何より楽しゅうないがよ。これを「ペアライドパラダイスパーティー」の中での交通安全祈願祭として、ペアでお守り交換をするイベントらあにすりゃあ、楽しいイベントに早変わりするっちゅう訳ながやき。
さらに奥井社長は、日本酒業界にも、いろいろヒントになる提言を与えてくれたがぜよ。まず、「夏子の酒」といい、「蔵」といい、なんで日本酒業界をテーマにしたヒット作は、あんなに重いがかと。重い話しじゃあ楽しい酒は飲めんぜよっちゅうがやき。しかも、日本酒業界の情報は、造る世界の話しばっかしで、楽しむ世界の話しがないと言うがぜよ。ほんで、日本酒業界にゃあ、日本酒の楽しみ方をキチンと伝えられる接点、チャネルがないと。チャネルづくりはこじゃんと重要やき、ここを何とかして、イメージを一貫して伝えられるチャネルを構築せにゃあイカンとも言うがぜよ。まっこと確かにおっしゃる通りながやき。まだまだ日本酒業界にゃあやれるこたぁこじゃんとあるっちゅうことながぜよ。
最後に奥井社長は、結局は「凡事の非凡な徹底のプログラム・システム化」やと言うがやき。「蟻」が「巨象」に勝つ余地は、ここしかないと。そして、「トータルな展開」が大切やとして、締め括られたがよ。
・・・ハーレーは「壊れる・パーツがない・乗りにくい」と言われよった時代、わずか17人しかおらんHDJに入り、三重苦・五重苦の中で、21年連続成長を達成し、なみいる巨象の中で登録台数12395台、シェアナンバーワンを達成した奥井社長の言葉は、さすがに重みが違うがやき。奥井社長、日本酒業界にとってもこじゃんと参考になる素晴らしいご講演、心から感謝申し上げますぜよ。
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