今回は、「透明人間の買いもの」(指南役 扶桑社 2007年11月10日発行 定価1300円+税)っちゅう書籍をご紹介するぜよ。
まず著者名の「指南役」っちゅうんは、あのホイチョイプロダクションズのブレーンでもある、エンタテインメント企画集団ながよ。ほんじゃき、こぢゃんと笑いもってお気楽に読める本ながやけんど、実は内容はなかなか深いもんがあるがやき。本のオビにゃあ、「世界初。透明人間の生態を解明しました。」とか、「マーケティングの問題作!!」とか書いちゅう通り、ビジネス書としたち一流で、こぢゃんと勉強になるがぜよ。ビジネス書が苦手やっちゅう人やち、これやったらスンナリ読めるがやないろかのう。
さて、この書籍で言うところの「透明人間」たぁ、おまさんであり、ワシであり、周りにおる大多数の人のことながよ。「目にゃあ見えん巨大マーケット」、際立った個性があるわけやないきマスコミらあで報じられることがない普通の人々、サイレントマジョリティ。それが「透明人間」ながやき。この世の大多数は、そんな「透明人間」で占められちゅうがよ。ほんでこの本のイントロにゃあ、いきなり次の文が書かれちょって笑えるがぜよ。(※以下、土佐弁訳)
透明人間、そりゃあおまさんぜよ。
なんでかゆうたら、おまさんは、
人にゃあ言えんけんど、実はキムタクが好き。
初めての店で注文するメニューは、大抵「ワシも」。
大河ドラマの主役は、正直誰やちかまん。
ビリーズブートキャンプは、まだ開封しちょらん。
・・・やろ?
「そうそう!」「あるある!」っちゅうて言いとうならんかよ?そんな笑える「透明人間」の生態が、あらゆる角度からリアルに描かれちょって、笑いもって学べるっちゅう、なかなか稀有な書籍ながぜよ。
内容は、「透明人間は、最近の宮崎駿は正直微妙と思うちゅう」とか、「好感度調査で、所ジョージが上位にランクされるがは透明人間の消極的理由」とか、「透明人間は、普段着は迷わんとユニクロで買う」とかっちゅうタイトルが20並んじょって、それぞれを面白マジメに細こうに解説してくれちゅうがやき。笑えるネタは主に前半に多うて、後半はチクとビジネス書っぽさが出てくるがよ。ここじゃあ、後半から、ワシが「ナルホド!」と思うた部分を、ひっとつだっけご紹介しちょこうか。
タイトルは、「透明人間は、カリスマシェフの料理よりか、評判のレシピで作った料理のほうが好き」っちゅうがよ。流行りのカリスマシェフが作る創作料理は、透明人間にとっちゃあ、「ぶっちゃけビミョー!」ながやき。ただしそれを口に出して言うこたぁないがぜよ。ほんで、料理家の辰巳芳子さんは、世の料理人について、こう警告するっちゅうて書かれちゅうがよ。
「本来、料理人は経験と共に『我』が落ちんといかんがです。素材に向かう時、自分っちゅうもんを引っ込めにゃあならん。」
さらに、そんな辰巳さんの思想を形成するがは、「レシピ」に対する深い畏敬の念やとして、次の言葉も紹介しちゅうがやき。
「レシピにゃあ必ず正解があるがです。」
レシピたぁ昨日、今日生まれたもんやのうて、長い料理の歴史の中で、多くの料理人らあによって磨かれ、更に多くの客の舌の上で判定されてきたもん。それを踏まえりゃあ、たった1人の料理人の浅はかな「我」が入り込める余地ゃあないことばあ、自ずとわかるっちゅうがぜよ。
ほんで著者は、料理好きの素人らあが書き込みをしゆう、ネットのレシピサイトの例を挙げるがよ。例えばある人が、自慢のカレーのレシピを公開。ほいたら別の人が、ひと手間加えて、こうすりゃどうやと提案する。更に別の人も何か助言する。また、それを食べた人らあの感想も書き込まれる。そうしてレシピはどんどん磨かれ、辰巳さんの言う「正解」に段々と近づいていくっちゅうがぜよ。
ほんで次にゃあ、ジェームズ・スロウィッキー氏の著書「みんなの意見は案外正しい」のエピソードに飛ぶがやき。1986年1月28日のスペースシャトル「チャレンジャー」の爆発事故の話ながよ。爆発から十数分後、株式市場はチャレンジャー発射に関わった主要企業4社の株の安売りを始めたがやと。ほいたら、4社のうち3社はまもなく株価を持ち直し、1社だっけが12%の大幅下落となったっちゅうがよ。結局事故原因が解明されたがは事故から半年後やったらしいがやけんど、その事故原因は、大幅下落の1社やったっちゅうがぜよ。専門家が半年かけて解き明かした事故原因を、ずぶの素人集団の株式市場が、わずか1日で見破ったっちゅうがやき。ジェームズ・スロウィッキー氏はこう分析するがよ。
「あの1社と事故の関係について確かなことを知っちゅう個人は存在しちょらんかっても、確かなことを知っちゅう『集団』は存在しちょった。1人1人のトレーダーの頭ん中にあった事故に関する情報のカケラを足し合わいたら、真相に近いもんが生まれたがよ。」
これが、スロウィッキー氏が唱える「みんなの意見は案外正しい」理論ながよ。ほんで著者は、ワシらあ透明人間の1人1人は浅はかな知恵しかないけんど、その平均値となりゃあ、極めて利口な存在になるらしいと、結ぶがぜよ。
こんな興味深い話がテンコ盛りの「透明人間の買いもの」。是非ご一読をオススメしますぜよ。
透明人間の買いもの
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