2008年01月04日

幸せの言の葉〈137〉

「おまさんらあは困難な時代に人生の始まりを迎えちゅう。歴史の中にゃあ、いかなる弱い泳ぎ手をも成功にまで押し上げてくれた満潮の時代もあったがよ。けんどおまさんらあの世代は、荒れた海を、波に逆ろうて泳ぐ。そりゃあつらいことぜよ。最初のうちは、息が切れるかもしれん。けんど安心してえいがよ。おまさんらあの前にも、おんなじように高い波に出くわした人らあがおったけんど、波に呑まれたりはせんかった。腕をふるうて、勇気を出しゃあ、つぎの凪(なぎ)まで持ちこたえることができるがぜよ。」(アンドレ・モーロア)

この「言の葉」は、モーロアさんの著書「人生をよりよく生きる技術」(アンドレ・モーロア 著 中山真彦 訳 講談社学術文庫)の中の一節ながよ。ほんで、この本が出版されたがは1939年のフランス。第二次世界大戦が勃発して、ヨーロッパ中が不安につつまれた激動の年ながやき。モーロアさんは、そんな時代に生まれたフランスの若者らあに向けて、「心配せんでえいき、勇気をもって生きていきなさい」っちゅうエールを贈ったがぜよ。

けんど、この「言の葉」を読みゃあ、まるで今の時代の、日本に生きちゅうワシらあに向けて書かれたかと思うような文章やともとれるがやき。

人間は、自分が生まれる時代や国や環境らあは、自分で選ぶこたぁできんがよ。それらあについちゃあ、ある意味宿命やとも言えるろう。けんど、どんなに困難な時代や国や環境に生まれたとしたち、心配せんでえいと、モーロアさんは力強うエールを贈ってくれるがやき。腕をふるうて、勇気を出しゃあ、大丈夫や、と。どんなに波が荒れ狂う海やち、必ず凪はやってくるぜよ、と。

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