「食堂かたつむり」(小川糸 著 ポプラ社 2008年1月15日第1刷発行 1300円+税)っちゅう、書き下ろし小説ながよ。かなり巷じゃあ話題になって、なかなかよう売れゆうようなきに、もう読まれた方も多いかもしれんけんど、ワシゃあある意味、こりゃあ食の名著やないかと感じたがぜよ。
まず著者の小川糸さん(http://www.ogawa-ito.com/)は、元々は作詞家で、春嵐っちゅう名で音楽制作チームFairlifeに参加しちゅうっちゅう、ちくと異色の経歴ながよ。ほんじゃきかしらん、この本のオビにゃあ、スピッツの草野マサムネさんや、ポルノグラフィティの岡野昭仁さんが、言葉を寄せられちゅうがやき。
「食べるこたぁ愛することであり、愛されることであり、つまり生きることなんやと改めて教えられる素敵な物語やったぜよ。」(草野マサムネ)
「毎日口にするごはんにこんなに物語が詰まっちゅうらあて気がつかんかったがよ。これからは大きな声で『いただきます』っちゅうて言いたいぜよ。」(岡野昭仁)
またオビの裏にゃあ、「失うたもん:恋、家財道具一式、声」「残ったもん:ぬか床」っちゅうて書いちゃある通り、ストーリーは、主人公の倫子がいきなり同棲しちょった恋人に、一緒に貯めてきた貯金や家財道具全部を持ち逃げされて、ショックで声が出せれんなるっちゅうところからスタートするがやき。ほんで、幸い残っちょった、大好きやった祖母から受け継いだ大切なぬか床ひっとつを大事に抱えて、大嫌いな母の住むふるさとに戻り物置小屋を借りて、恋人と一緒に開店するがが夢やったレストランをオープンさせるがぜよ。
レストランの名は「食堂かたつむり」。メニューはナシで、お客は1日1組だっけ。お客とやり取りした内容に基づいて、倫子がその都度メニューを考えるっちゅうスタイルながよ。ほんで、単なる偶然の産物か奇跡か、「食堂かたつむり」の料理を食べりゃあ願い事が叶うっちゅうまことしやかな噂が、ちびっとずつ村や近所の町らあに広がっていくがぜよ。
小説やき、ここでストーリーをあんまり紹介するこたぁせんけんど、まぁストーリー的にゃあ夢物語みたいなファンタジーながよ。けんど、主人公倫子の料理に対する修行僧並みにストイックで真摯な態度や、その料理シーンの描写らあは、まっことこぢゃんとリアルで現実的ながよ。食に携わる人はみんなあ、この本を読むべきやないろうか。きっと、こぢゃんと得るもんがあるはずながぜよ。酒造メーカーのワシにとったち、その点じゃあまっこといろいろ学ばいてもうて、こぢゃんと得るもんがあったがぜよ。
とにかくワシにとっての一番の収穫は、「食は命をいただくこと」やっちゅう、当たり前と言やあ当たり前すぎることを、改めて身体の芯まで落とし込むことができたと思えるようになったっちゅうことながよ。食べるっちゅうことは、他の生命を殺して自分の身体に取り入れて、自分の生命をつなぐことながやき。この残酷なまでにリアルな現実から、決してワシらあは目をそらしちゃあイカンがよ。それを踏まえた上で「食」たぁ、人を幸せにすることができる、世界で唯一存在が確認されちゅうリアルな魔法ながぜよ。
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司牡丹酒造株式会社