2009年05月20日

渡部昇一先生の「語源力」は英語の語源でわかる思想の歴史ぜよ!

 上智大学名誉教授で、専門の英語学以外にも、幅広い評論活動や著述活動をされゆう渡部昇一先生は、ワシがこぢゃんと尊敬しちゅう方ながよ。

 ワシが本好きになったがも元はといやぁ、渡部先生の「知的生活の方法」を読んだががきっかけながやき。

 その渡部先生の新刊、「語源力」(〜英語の語源でわかる人間の思想の歴史〜)〈渡部昇一 著 海竜社 平成21年3月24日発行 1500円+税〉を、今回はちくとご紹介しますぜよ。語源力語源力2

 渡部先生は、語源学たぁ、古代人がイメージしちょったことを、数千年もさかのぼって知ろうとする学問で、「イメージの考古学」やっちゅうがやき。
古代人が、霊魂とか運命とかっちゅうもんを、最初にどうイメージしてその言葉を作ったがか。それを理解することによって、古代人の人生観や世界観をある程度推測しうるし、その言葉を使うてその後に発展してきた思想や哲学を、理解するヒントになるがやないかと、渡部先生はおっしゃるがぜよ。

 ほんで、実は今回のこの書籍は、20年ばあ前の連続講演会で渡部先生が話された内容ながやと。

「運命」
「男と女」
「奇跡」
「税」
「霊魂」
「王と皇帝」

 これらあ6つの英語の語源をベースに、日本語、ドイツ語、ラテン語らあの、あらゆる国の言葉の語源や歴史や思想や哲学まで交えもって、縦横無尽に語るその内容は、まっこと渡部先生は、日本で10本の指に入る本物の賢者やと思うがぜよ。
ほいたら、ひっとつだっけ内容をちくとご紹介しちょこうか。

 「霊魂」とか「精神」は英語で「spirit」(スピリット)ながよ。こりゃあラテン語の「spiritus」(スピルトス)が語源で、「微風、呼吸、生命、魂、精神」っちゅう意味で、さらにさかのぼりゃあ、「息を吐く、呼吸する」っちゅう「spirrare」(スピラーレ)、さらにさかのぼりゃあ、「吹く」っちゅう意味の印欧祖語「speis」(スペイス)になるがやと。

 つまり霊魂や精神の語源は、人間の呼吸からきちゅうっちゅうことながよ。そんな興味深い語源の話から始まり、話題は哲学や思想の話へ。

 カントは、霊魂や霊界の存在らあを否定するこたぁできんけんど、理性の立ち入ることのできん世界やき、学問の対象にゃあならんとしたがやき。

 ほんで、カントが学問の世界において理論的に、神秘主義、オカルトと手を切ったことが、近代ヨーロッパの成立の原動力になったっちゅうがぜよ。
ところが、霊魂を学問の対象にゃあせんっちゅうんは、カントの純粋理性の認識においてながよ。

 カントは、実践理性の立場からは、霊魂の存在と不滅性はなけりゃあイカンとするがぜよ。

 霊魂も神も存在せんで、魂の不滅性もないとすりゃあ、道徳律そのもんの成立基盤がのうなってしまうっちゅうがよ。

 けんど、道徳律の存在は、誰っちゃあ否定できん事実ながよ。ほんじゃき、人間世界の道徳や倫理が成立するためにゃあ、実践理性は霊魂の不滅や神の存在を、どういたち要請せざるを得んっちゅうんが、カントの考え方やっちゅうがぜよ。

 まっこと、こぢゃんと奥行きの深い話やと思わんかよ。他にも、知的好奇心を満足さいてくれる興味深い話や、人生やビジネスにも役に立つような話らあが、この書籍にゃあ満載ながよ。

 興味を持たれた方は、是非ご一読されることをオススメしますぜよ。


語源力―英語の語源でわかる人間の思想の歴史











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この記事へのコメント
大学の頃、渡辺先生の講座にもぐりこもうとして失敗したことがあります。(他の大学でしたので)
歴史の本に感銘を受けての行動でしたが、英語の先生だったとは知りませんでした。

国外を見て、国内も見るからこそ、深いお考えが醸成されるのですね。

Posted by toriumi at 2009年05月21日 00:50
カントですか。久しぶりに聞く名前ですね。
この名前を聞いただけで眠くなりそうですね。

うちの父は酒を沸かすとき、母に
「かんと(しっかりの意)沸かして」と言います。
今の僕の生活に関係するカントはこんな感じです。

ちなみにカントは日常生活の中で非常に時間に正確だったそうですね。

時間に厳しくお燗をすることを
カント沸かしと命名しましょうか…

説明してるうちに座が冷めそうですから
やっぱりやめましょう。
Posted by toku at 2009年05月21日 04:28
toriumiさん、コメントありがとうぜよ!
実はワシもまだ、渡部先生にお会いするチャンスを得てないがやき。是非直接ナマでお話をうかごうてみたいもんながぜよ。
Posted by 竹村昭彦 at 2009年05月22日 02:29
tokuさん、コメントありがとうぜよ!
カント沸かし、哲学科の学生さん当たりにゃあ、流行るかもしれんのう。
Posted by 竹村昭彦 at 2009年05月22日 02:34