2010年09月05日

幸せの言の葉〈403〉

「あらし山 花に心のとまるとも 馴(なれ)し御国(みくに)の 春なわすれそ」(八本こ)


この和歌は、平井・西山家資料の「坂本龍馬等寄せ書き胴掛(どうかけ)」(高知県立歴史民俗資料館・所蔵)に残されちゅうもんで、「八本こ」っちゅうんは、龍馬さんの初恋の人、平井加尾さんやと言われちゅうがよ。


意味は、「京都は嵐山の花に心がとまったとしても、馴れ親しんだ土佐の春は忘れないでください。」っちゅうことながやき。


こりゃあ、そのまんまの歌に取ることもできるけんど、ちくと深読みすることもできるがよ。


つまり、まるでこの歌が予言したみたいに、龍馬さんはその後、京都でお龍さんと出会うて夫婦になるがぜよ。


「京都の花に心がとまった」っちゅうことながやき。


もちろん龍馬さんはお龍さんを心底愛しちょったろうけんど、「馴し御国の春」、つまり初恋の人・加尾さんのことは、決して忘れるこたぁなかったがやないろうか。


加尾さんは、女性ならではの本能的な感覚で、結ばれぬ二人の運命を悟り、こんな予知的な和歌を残したがやないろうかのう。


けんどやっぱし初恋っちゅうんは、いつの時代の誰にとったち、生涯忘れることのできん、甘酸っぱい記憶ながぜよ。


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