「ぼくには言い訳など何もないぞ。どんな運命が待っちょろうと後悔せん。」(吉田松陰・「龍馬伝」より)
NHK大河ドラマ「龍馬伝」第6話における、吉田松陰さんの言の葉ながよ。
黒船を見てしもうてから剣の道に迷いが生じ、師匠の千葉定吉さんに道場を追い出されてしもうた龍馬さん。
松陰さんやったらその答えを教えてくれると信じて捜し回り、やっと出会えたと思うたら、なんと松陰さんは黒船でアメリカに密航しょうと企てゆうところやったがやき。
密航が見つかったら死罪やっちゅうて説得しょうとする桂小五郎さんに向こうて、松陰さんはこの言の葉を叫ぶがぜよ。
「この世には、いくら本を読みあさったところで、見つからん答えが山ほどある!見ろ。ぼくには言い訳など何もないぞ。どんな運命が待っちょろうと後悔せん。ぼくが今やるべきことは、黒船に乗り込んでアメリカに行くことじゃ!」
その志に感動し、「わしも連れていってもらえんやろうか!」と叫ぶ龍馬さん。
そんな龍馬さんを、「馬鹿たれッ」とビンタをして、松陰さんはたしなめるがよ。
「黒船に乗り込んでアメリカに行くんは、ぼくのやるべきことであって君じゃない。君は何者じゃ。なんのためにこの天下におるんじゃ。君のやるべきことはなんなんじゃ!」
言葉に詰まり、答えを見つけろうと考えを巡らせる龍馬さんに、松陰さんは「考えるな。おのれの心を見よ!」、「そこにはもう答えがあるはずじゃ。」と語りかけるがやき。
そして何のためらいものう、小舟に乗って黒船に向こうて行く松陰さん。
信じがたい光景と松陰さんの燃えるような志の衝撃に、龍馬さんは腰を抜かしてしまうがよ。
結局松陰さんは黒船に拒まれ、自ら奉行所に出頭してお縄になったっちゅう話が流れてくるがやき。
もはや迷うことのう千葉道場に向かう龍馬さん。
「定吉先生・・・ワシはどうかしちょったがです。自分でも気づかんうちに、剣を、道具じゃと考えてしもうた。黒船に通用するかせんかは、剣ではなかったがでした。この坂本龍馬ゆう人間の問題やったがです。先生、どうかわしをお許しください。もういっぺん、もういっぺん、この道場でわしを鍛えていただきたいがです。お願いいたします。」
深々と頭を下げる龍馬さんに、「時がかかったのぉ。わかったらぐずぐずするな。」と許しを与える定吉さん。
松陰さんの燃えるような志が、龍馬さんに伝わり、受け継がれた瞬間やったがよ。
「ぼくには言い訳などない。」
松陰さんのこの言の葉は、言い訳ばっかり考えて生きちゅう現代人のワシらあに、一喝を与えてくれるがぜよ。
「龍馬伝I」(作 福田靖 ノベライズ 青木邦子 NHK出版)より