「そのうちみんな悟ってくるのさ。自分たちは何々藩の藩士ではなく、日本人だということを。西洋文化の凄さを。そして、異国とけんかするなんて愚かしいってな。若えもんは、そういう柔らけえ頭を持っている。だから俺はお前たちを頼みにしてんだよ、以蔵。」(勝麟太郎・「龍馬伝」より)
NHK大河ドラマ「龍馬伝」第18話における、勝麟太郎さんの言の葉ながよ。
武市半平太さんの命令で、勝さんを斬りに来る岡田以蔵さん。
けんどそれを龍馬さんに見つかり、以蔵さんは目的を達することができんかったがやき。
さらに勝さんの地球儀の解説と、誰とやち分け隔てのう接する心根に触れ、気持ちが揺れる以蔵さんながよ。
ほんでいつの間にか龍馬さんに説得され、京での勝さんの用心棒になってしまうがやき。
居酒屋で酒を酌み交わす、勝さんと龍馬さんと以蔵さん。
そこで龍馬さんが、勝さんに心配事の相談をするがよ。
龍馬「実は、勝塾に入ってくれる者らあは、みんなあ戦をするための海軍じゃと思うちゅうがです。日本が力をつけて西洋諸国と互角になるまで、戦を起こさせんための海軍じゃゆうことを、どういたらわからせることができるがですろうか。」
勝「いいんだよ、放っといて。口で言ったってしょうがねえよ。おめえの考えは間違いだと言われて、素直に認めるのは以蔵くらいのもんだ。」
以蔵「え」
勝「人ってのは肌で感じて変わっていくもんさ。あの塾のいいところはな、まず藩の壁がねえ。上下の隔てもねえ。そして軍艦を操れるようになるためには、西洋の学問を学ばなければならねえ。」
続いて勝さんが語ったがが、今回の言の葉ながやき。
勝「そのうちみんな悟ってくるのさ。自分たちは何々藩の藩士ではなく、日本人だということを。西洋文化の凄さを。そして、異国とけんかするなんて愚かしいってな。若えもんは、そういう柔らけえ頭を持っている。だから俺はお前たちを頼みにしてんだよ、以蔵。」
龍馬「勝先生・・・ありがとうございます。勝先生に会いに来てよかった。」
胸のもやもやが消えてやる気百倍になり、元気に店を飛び出して大坂に戻る龍馬さん。
勝さんは笑いもって見送り、その笑顔を以蔵さんに向け、こう言うがよ。
勝「なんでああいう奴と付き合わねえんだよ、おめえは。」
以蔵さんの渇いた心が、かすかに潤うたひと時やったがぜよ。
「龍馬伝Ⅱ」(作 福田靖 ノベライズ 青木邦子 NHK出版)より