2010年12月19日

幸せの言の葉〈433〉

「聞こえちょりました。けんど、妻と朝げをしておりましたき。」(武市半平太・「龍馬伝」より)


NHK大河ドラマ「龍馬伝」第21話における、武市半平太さんの言の葉ながよ。


朝廷の攘夷派失脚に呼応し、山内容堂さんは土佐勤王党を弾圧し始めるがやき。


土佐勤王党の危機を薄々勘づいちょりながらも、何も言わんと普段と変わりのう朝食の支度をする半平太さんの妻、冨さん。


ふと半平太さんが語るがよ。


半平太「申し訳なかったの。」


冨「私はおまさんの妻です。おまさんを支えるがが役目です。外で泣き言が言えないやったら、どうぞ私に言うてつかあさい。私には本当のおまさんをみせてつかあさい。」


半平太「これからはおまんと二人で過ごすがぜよ。夏が終わる前に桂浜に行こう。海がキラキラして美しいろう。」


冨「はい。」


半平太「秋になったら・・・」


そん時、数名の役人がやってきて、「武市半平太はおるかえ!」「大殿様の命である。神妙に出てまいれ!」と大声を張り上げるがやき。


半平太「・・・秋になったら、紅葉狩りじゃの。二人で温泉に行ってもえい。どうじゃ、冨。」


冨「はい。」


半平太「冬になったら・・・そうじゃのう。」


冨「どこにも行かんと、ここで二人で過ごしたいがです。」


半平太「そうか・・・ほんならそうしよう。」


ついに役人らあが部屋に入ってくるがよ。


役人「武市。わしの声が聞こえんかったがか。」


半平太「聞こえちょりました。けんど、妻と朝げをしておりましたき。」


役人「立て。刀はわしらが預かるきにの。」


半平太「冨。ちっくと出かけてくるき。」


冨「・・・はい。行ってらっしゃいませ。」


半平太さんが役人らあに囲まれ、背中を押されるようにして行ってしもうた後、張っちょった気持ちが折れ、しゃくりあげて泣きだす冨さん・・・。


冨「おまさん・・・おまさん・・・!」


半平太さんの朝食の膳が、すぐにも半平太さんが戻ってくるかのように残されちょったがぜよ。


「龍馬伝Ⅱ」(作 福田靖 ノベライズ 青木邦子 NHK出版)より



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