「けんど、わしは心苦しいがぜよ。日本を守るゆうて大口を叩いて土佐を飛び出したのに、まだなんちゃあ成し遂げちゃあせん。えい歳をして、まだ親兄弟に助けられて生きちゅう・・・まっこと情けないがぜよ。この金は、わしには使えん。おまんが使うてくれ。妹を取り戻して、これを生き金にしてくれや。」(坂本龍馬・「龍馬伝」より)
NHK大河ドラマ「龍馬伝」第22話における、龍馬さんの言の葉ながよ。
妹が借金のかたにヤクザ者に連れていかれたっちゅうて、包丁片手に飛び出していこうとする楢崎龍こと、おりょうさん。
気の強いおなごじゃとあきれもって、龍馬さんは語るがやき。
龍馬「確かに五両の借金で妹をさらっていくとはひどい連中じゃ。おまんの怒りもようわかる。けんどの、借金は借金ぜよ。金は返さんが妹は返せ、返さんなら殺しちゃるゆうがは、相手がヤクザでも理が通らんのぉ。」
りょう「そしたら、どうしたらええの！」
泣き崩れるおりょうさん。
龍馬「ちょうど五両あるき。これを使いや。」
おりょう「どうしてあんたさんが・・・うちを買おうってわけ！」
龍馬「そんなこと思うちゃあせん。」
この五両は、二度目の脱藩者となった龍馬さんを心配して、乙女姉やんが手紙とともに送ってきてくれたもんながよ。
龍馬「けんど、わしは心苦しいがぜよ。日本を守るゆうて大口を叩いて土佐を飛び出したのに、まだなんちゃあ成し遂げちゃあせん。えい歳をして、まだ親兄弟に助けられて生きちゅう・・・まっこと情けないがぜよ。この金は、わしには使えん。おまんが使うてくれ。妹を取り戻して、これを生き金にしてくれや。」
これで姉妹が助かるやったら、五両はそれ以上の価値をともなう生き金になる・・・そんな龍馬さんの思いがどこまで通じたか、おりょうさんはアゼンとして龍馬さんを見つめるがぜよ。
「龍馬伝�供�(作 福田靖 ノベライズ 青木邦子 NHK出版)より
