「ここに集まっちゅうがはたった二百人ぜよ。たった二百人で日本の海軍を作ろうとしゆうがじゃ、わしらは。アメリカ、エゲレス、フランス、オロシア。異国は日本がバラバラになるがを待ちゆう。いつでもこの国を乗っ取る準備ができちゅう。けんどそうはさせんと心に決めた者が、この海軍操練所に集まっちゅうがやろうが。おらんでもえいゆう仲間らあ、ここにはひとりもおらん！」(坂本龍馬・「龍馬伝」より)
NHK大河ドラマ「龍馬伝」第23話における、龍馬さんの言の葉ながよ。
ある日、神戸の海軍操練所の仲間の1人望月亀弥太さんが、突然おらんなったがよ。
攘夷派が一掃されつつある状況に我慢ならんで、長州藩士らあの企てに加わるために、京に行ったっちゅうがやき。
連れ戻しに行こうとする龍馬さんに、「海軍よりか攘夷派を選んだがやろ」とか、「志が違うもんを無理に引き止めるこたぁない」とか、「考えた末のことやろうき、好きにさせちゃり」とかっちゅう声が、操練所のメンバーから次々とあがったがよ。
ほいたら龍馬さんは、「それは違うぜよ！」と言い放ち、今回の言の葉を語るがやき。
「ここに集まっちゅうがはたった二百人ぜよ。たった二百人で日本の海軍を作ろうとしゆうがじゃ、わしらは。アメリカ、エゲレス、フランス、オロシア。異国は日本がバラバラになるがを待ちゆう。いつでもこの国を乗っ取る準備ができちゅう。けんどそうはさせんと心に決めた者が、この海軍操練所に集まっちゅうがやろうが。おらんでもえいゆう仲間らあ、ここにはひとりもおらん！」
さらに圧倒的な説得力で、次のとおり続けるがよ。
「みんなあで海軍ゆう大きな船を動かすがじゃ。亀弥太は大事な大事な仲間ぜよ！新しい道を進まんといかんとわかっちょっても、かつての仲間を見捨てとうはない、あの時の志を忘れとうはないゆう気持ちは、みんなあやちわかるろう。亀弥太は真っ直ぐなえい奴ぜよ。あんなえい奴を死なすわけにはいかんき。」
操練所のメンバーは、龍馬さんの人間性の前に兜を脱いで、いつの間にかみんなあが引き締まった顏になっちょったがやき。
けんど龍馬さんが京に着いて、長州藩士らあと亀弥太さんの密談現場の池田屋に到着した時にゃあ既に時遅しで、みんなあ新選組にやられてしもうて、亀弥太さんも龍馬さんの目の前でこと切れてしもうたがよ。
これが、明治維新を1年遅らせたっちゅうて世に言われる、池田屋事件やったがぜよ。
「龍馬伝�供�(作 福田靖 ノベライズ 青木邦子 NHK出版)より
