「わしの望みは、上士も下士もない世の中になり、日本が独り立ちして西洋諸国と肩を並べる国になることながですき。それを成し遂げるためには、命は惜しまん。」(坂本龍馬・「龍馬伝」より)
昨年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」第31話(小説版では第30話)における、龍馬さんの言の葉ながよ。
幕府の征伐軍が押し寄せる緊張が日に日に高まりつつある下関の長州軍を、龍馬さんは訪ねるがやき。
そこで龍馬さんは桂小五郎さんに、「わしらは長州と薩摩の手を結ばせるために来たがやき。」と伝えるがよ。
「・・・何ッ。」と険しい表情になる桂さん。
けんど龍馬さんの真摯な姿勢に心を動かし、「君を信じよう、坂本君。」っちゅうて言うてくれたがやき。
じっと西郷さんの到着を待つ、龍馬さんと桂さん。
桂さんは、龍馬さんに質問するがよ。
桂「長州と薩摩の盟約を成し遂げたら、君は薩摩に取り立てられるんか。」
龍馬「いえ、そんな約束らあなんちゃあないがです。」
桂「じゃあ、何のためにこんなことをしちょる。ぼくらを結び付けて、君に何の得があるんか。」
龍馬「桂さんらあに幕府を倒してもらわんと、日本の将来はないきに。幕府の連中は、自分らあさえよかったらえいち思うちゅう。この国は、異国のぶんどり合戦の餌食にされてしまうがぜよ。」
桂「・・・君は日本のために命をかけちょるんか。」
ここで龍馬さんは、この言の葉を語るがやき。
龍馬「わしの望みは、上士も下士もない世の中になり、日本が独り立ちして西洋諸国と肩を並べる国になることながですき。それを成し遂げるためには、命は惜しまん。」
これがあの坂本龍馬かと、桂さんは目を見張るがよ。
桂さんが初めて会うた頃の龍馬さんは、蒸気船も知らんと、攘夷の何たるかもわかってなかったがやき。
ところが途中まで来ちょった西郷さんは、突然下関にゃあ行かんっちゅうて京に向こうてしまうがよ。
桂「二度とぼくの前に現れんな。」
呼び止める龍馬さんの眼前に、抜刀した刀を突きつけ、桂さんは憤然と言い放つがやき。
こうなってしもうたら、もはや「薩長同盟」は実現は不可能やと、誰もが思うたがぜよ。
「龍馬伝Ⅲ」 作 福田靖 ノベライズ 青木邦子 NHK出版)より