2011年01月16日

幸せの言の葉〈444〉

「私心があっては志とは言わんき。」(坂本龍馬・「龍馬伝」より)


昨年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」第33話(小説版では第32話)における、龍馬さんの言の葉ながよ。


いよいよ薩長同盟実現に向けて、龍馬さんらあ亀山社中の大仕事が始まったがやき。


けんど、薩摩名義で軍艦と銃を購入するっちゅう話やに、薩摩のもんがおらんで亀山社中のもんだっけなもんやき、グラバーさんは信用してくれいで、交渉は成立せんがよ。


悩み続けた末、龍馬さんは決断するがやき。


龍馬「・・・策を弄するゆうがは、わしらには向いちゃあせんがかもしれんのぉ。大事なことを隠しちゅうがは、どういても見破られてしまうがじゃ。」


意を決して、グラバー邸でのパーティに乗り込む龍馬さん。


龍馬「グラバーさん!もういっぺん話を聞いてつかあさい。侍としてではのうて、ひとりの日本人として話がしたいがですき!頼む!」


侍の誇りをかなぐり捨てて土下座する龍馬さんに、グラバーさんも無下にノーとは言えんがよ。


グラバー「客を待たせるわけにはいきません。10分だけ時間を差し上げましょう。」


龍馬「グラバーさんは日本がお好きですろうか。エゲレスからこんな遠い国に来て、嫌になることはないろうか。」


グラバー「もちろんありますよ。でも、私は商売のために来たんです。」


龍馬「なるほど。金さえ稼げるやったらどうでもえいわけですね。いや、それでえいがです。グラバーさんにはグラバーさんの考え方があるがですき。」


グラバー「・・・何が言いたいのです。」


龍馬「商売ゆうがは世の中の風向きを読まんといけません。風向きによって金の流れも変わるがじゃき。日本がこれからどうなるかわかったら、いや、自分がそれを決めることができたら、グラバーさんは大儲けできるがぜよ。」


ほんでついに龍馬さんはグラバーさんに、薩摩と長州が手を組むっちゅう薩長同盟の秘密を打ち明けるがやき。


龍馬「徳川幕府はもうすぐ終わるろう。薩摩と長州が手を組んで、幕府に取って代わるきにのぉ。」


龍馬「薩摩も長州もその気になっちゅう。あとは証文を交わすだけながじゃき。それが軍艦と銃ぜよ、グラバーさん。グラバーさんが軍艦を仕入れてくれたら、日本は大きゅう変わるがじゃき。グラバーさんは、その流れに乗って大儲けができるろう。」


龍馬「日本を守るには、この手立てしかないですきに。グラバーさんにはどうでもえいことやろう。それで構わんがじゃき。わしは今、グラバーさんに金儲けの話を持ちかけちゅうがですきに。」


さらに、長州の桂小五郎さんの「十五万両確かに用意できる」っちゅう証書も見せて、龍馬さんは語りかけるがよ。


龍馬「わしはもう隠し事は何もしちゃあせん。すべて正直に話したがじゃき。この話に乗るか乗らんかはグラバーさん次第ぜよ。」


グラバー「ひとつだけ質問がある。あなたの取り分は?」


龍馬「一銭もいらんがじゃ。」


グラバー「What?」


龍馬「今言うたろう。わしらあは日本を守りたいだけじゃきに。」


穏やかな笑みを浮かべて、龍馬さんはこの言の葉を語るがやき。


龍馬「私心があっては志とは言わんき。」


グラバー「シシン・・・?」


龍馬「自分らあどうでもえいゆうことぜよ。」


ついにグラバーさんはOKし、ここに薩長同盟実現に向けての、こぢゃんと大きい一歩が踏み出されたがぜよ!


「龍馬伝Ⅲ」(作 福田靖 ノベライズ 青木邦子 NHK出版)より



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