「ほんなら、こうせんろうか。今お決めになられた五つの条文は、すべて戦における約束事ですき。そこに、もうひとつ加えるがです。ここに至るまで、何人もの命が失われてきたがです。わしの友にも死んでいった者が大勢おる。その者らあの志も、薩長の盟約に入れてくれませんろうか。」(坂本龍馬・「龍馬伝」より)
昨年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」第35話(小説版では第34話)における、龍馬さんの言の葉ながよ。
慶応2年(1866年)1月22日、ついに薩摩と長州の秘密会談が始まったがやき。
薩摩藩からは家老・小松帯刀さんと御所役・西郷吉之助さん、長州藩からは政事堂用掛・桂小五郎改め木戸貫治さんが出席し、立会人は元土佐藩士・坂本龍馬さんながよ。
西郷「そいならまず、幕府と長州が戦になったとき、おいどん達薩摩は、二千の兵を京と大坂に上らせもんそ。」
会談は滞りのう進み、最終的に絞り込まれた五つの項目を、西郷さんがひとつひとつ読み上げていったがやき。
その内容は、薩摩が徹頭徹尾長州の味方となって、幕府と戦うっちゅうもんやったがよ。
小松「以上でよーごわすか。」
小松さんが確認を求めると、木戸さんはちくと黙考するがやき。
木戸「・・・このままじゃ、ぼくは長州に帰れん。この約束は、どれも長州が薩摩の助けを受けるっちゅうもんじゃ。これは対等じゃない。」
西郷「じゃっどん、長州にとっては・・・」
木戸「わかっちょる。わかっちょるんじゃが・・・ぼくは、長州が救われるんならと恥を忍び、意を決してここに来たんじゃ。長州人には意地っちゅうもんがある。」
ここで、それまで黙って成り行きを見守ってきた龍馬さんが語ったがが、今回の言の葉ながよ。
龍馬「ほんなら、こうせんろうか。今お決めになられた五つの条文は、すべて戦における約束事ですき。そこに、もうひとつ加えるがです。ここに至るまで、何人もの命が失われてきたがです。わしの友にも死んでいった者が大勢おる。その者らあの志も、薩長の盟約に入れてくれませんろうか。」
木戸「その一文とは?」
龍馬「薩長両藩は誠の心を持って合体し、日本のために、傾きかけちゅうこの国を立て直すために、双方とも粉骨砕身尽力する。これなら薩摩と長州は対等ですろう。」
龍馬さんの発案を、西郷さん、小松さん、木戸さんらあみんなあは、感銘を持って受け入れたがやき。
ここについに、幕末の奇跡といわれた薩長同盟が成立するがぜよ。
「龍馬伝Ⅲ」(作 福田靖 ノベライズ 青木邦子 NHK出版)より