今回は、「共感企業」~ビジネス2.0のビジョン~(阪本啓一 著 日本経済新聞出版社 1900円+税 2010年9月13日発行)っちゅう、こぢゃんと学びになるお薦め書籍をご紹介しますぜよ。
まずプロローグで著者は、「共感企業」たぁ何かを定義しちゅうがやき。
「生活者・顧客との間に共感を生み出すあり方の企業を、共感企業と呼ぶ。共感を絆に、企業内では組織の壁を超え、あるいは企業同士の壁を超えて時に生活者・顧客をも巻き込んで共に価値を創造する企業のことである。」
ほいたら今、なんで共感企業ながか?
著者は、その答えはシンプルやっちゅうて、次のように答えるがよ。
企業の提案・提供するもんが、「良い」だっけじゃあ充分やのうて、「とびぬけた」製品・サービスやないと、もはや目の肥えた生活者・顧客はお金を払う気になってくれんがやき。
ほんで、とびぬけた製品・サービスを社会に提案しゆう「企業のあり方そのもの」が問われる時代になってきちゅうっちゅうがよ。
そのあり方に生活者・顧客が共感せにゃあ、ビジネスとして望ましい業績を上げるこたぁできんっちゅうがぜよ。
例にアップルを取り上げての説明が、なかなか分かりやすいがやき。
人々がiPadやiPhoneに夢中になる理由は、それらのテクノロジーやスペックに惹かれてだけやのうて、それらの「してくれること」、即ち、得られる楽しさ、ワクワク、未体験の体験への期待、喜びと感動の予感・・・そういう、「いわく言い難い何か」、「エモーショナルなサムシング」を手にしたいきながよ。
アップルは、そんな「期待の感情=思い」を獲得しちゅう企業ブランドながやき。
この「思い」を言い換えりゃあ、そりゃあ「共感」ながよ。
アップルがこれまで製品を通じて提案してきた価値に生活者・顧客が共感し、その思いがブランドを支えちゅうがやき。
「また何かワクワクする製品を生み出してくれるに違いない」っちゅう思い。
ほんで、この「共感」っちゅう生活者・顧客の感情は、現代のビジネス戦略を構築する上で、極めて重要なポイントやっちゅうて、著者は断言するがぜよ。
ビジネスっちゅうたら「儲かりゃあそれでえい」「手段は問わん」「きれいごとじゃあ済まん」っちゅうような印象があるけんど、それこそが「新しい生活者・顧客」らあが嫌う企業姿勢やっちゅうがよ。
そんなこれまでのビジネスのあり方を1.0とし、バージョンアップした新しいビジネスのあり方を、著者は2.0と呼ぶがやき。
ほんで、そのあり方こそが、新しい顧客から支持される共感企業のビジョンやとして、ビジネス2.0はどんな姿をしちゅうがかを、様々な角度から述べていくがぜよ。
ほいたらここで、この書籍の内容を全てご紹介するこたぁ無理やきに、以下にワシが傍線を引いてチェックした部分、感銘を受けた部分らあを中心に、抜粋してご紹介さいていただきます。
●既存の価値観はもとより、ビジネスの語彙や文法が崩壊してしもうちゅう。(中略)既存のメジャービジネスが不調ながやったら、「これまでと全く違うこと」をやりゃあうまいこといくがやないろうか?ただここで注意したいがは、「やり方(HOW)」の問題やのうて「あり方(being)」に焦点を当てるべきやっちゅう点ながよ。(中略)「企業のあり方、そのもの」が根底から揺るがされゆうがやないがか。
●新しいビジネスワールドに突入しちゅう。そりゃあ一瞬たりとも同じ波がない、変化が常態のビジネスサーフィンの世界ぜよ!
●ビジネス2.0じゃあ、「貢献」「評価」「尊敬」「信頼」「感謝」「喜び(JOY)」「感動(WOW)」「愛」「徳」そして「共感」っちゅう言葉がキーワードになる。
●「シルク・ドゥ・ソレイユ」・・・自らアートサーカスっちゅうフィールドを創り出し、ビジネスとして成功を収めた今も、常に革新し続けゆうその姿勢。(中略)アートとビジネスの健康的な結合。絶えざる革新。そして想像力の活用。これがそのまんま「通常の」ビジネスの世界でも実現すりゃあ、素敵なことやないろうか。
●新しい現実が生まれつつあるこたぁ確かやけんど、まだその新しい世界を記述するに足る十分な語彙と文法をワシらあが手にしちゅうたぁ言い難い。(中略)けんど、「変化」はわかる。「方向性」もわかる。その変化をワシゃあ「ビジネス1.0からビジネス2.0へ」と表現する。定義してもうか。
ビジネス1.0・・・人の気持ちと地球を消費し尽くすビジネスのあり方。
ビジネス2.0・・・人の気持ちと地球をリスペクトするビジネスのあり方。
●ウッフィー(Whuffie)は、仮想通貨や。(中略)ウッフィーはソーシャルキャピタルで、現実の通貨じゃあ買いとうたち買えん。徹底的に利他的な性質を持つ。つまり、誰か他人のお役に立つ、貢献する、評価される、尊敬を受ける、信頼を得る、感謝される、喜び(JOY)、感動(WOW)、共感・・・いわゆる日本語で言うところの「徳を積む」とウッフィーが増える仕組みになっちゅうがやき。「ウッフィー」っちゅう言葉になじめん人は、自分で好きな言葉に置き換えて考えりゃあえい。関西人にとっちゃあ「まいど」がなじみ深いかもしれんがよ。
●ビジネスサーフィンの環境の中やち、うまいこといきゆう企業はある。(中略)これらのケースの企業がうもういきゆう理由を分析してみると三つある。
・「する」(doing)ことやのうて「である」(being)ことから発想する。
・業界常識を破るイノベーション。
・社員参加型経営。
●「する」(doing)ことやのうて「である」(being)ことから発想する秘訣は、自社のビジネスの定義を拡大してみることながよ。ほいたらビジネスチャンスが見えてくる。クロネコヤマトの宅急便は「荷物をドア・トゥ・ドアで集荷して届ける」(doing)っちゅう自社のビジネスの定義を「玄関ドアを開けてもらえるパーミション・ビジネス」(being)と拡大した。物騒なご時世にピンポン一つでドアを開けてもらえる強みを生かすさまざまなビジネスチャンスが生まれたがやき。
●前提が変化したとき、やるべきは「まっとうまく」「まっと一所懸命に」やることやない。「違うやり方を発見する」ことながよ。ブランドのDNAを大切に生かしつつ、「する」(doing)ことやのうて「である」(being)ことから発想するがよ。
●いずれも、経営の前提が刻々と変化しゆうことに対し、過去へのこだわりを捨て、全く新しいことに挑戦しゆう。ただし、コアとなる「自社の核」は手放さんと、むしろ、生かしちゅう。軸にあるがはブランド、戦略、イノベーションながぜよ。
●ブランドは顧客に提供したい価値を具現化したもんである。ブランドネームとブランドとは違う。グッチはブランドネームで、「イタリアの高級ファッション」がブランドながよ。ヤクルトはブランドネームで、「生きた乳酸菌」がブランドながよ。イチローはブランドネームで、「大リーグで大活躍する日本人の誇り」がブランドながよ。
●自社ブランドを動詞で表現してみると提供価値がわかる。複数ある場合もある。その中で、ブランドをブランドたらしめちゅう最も中核の価値を、核となる価値っちゅう意味でコアバリューと呼ぶ。例えば、各社のコアバリューは次の通り。
「おいしく冷やす」ニチレイ
「価格でびっくりさせる」ユニクロ
「いつも新しい喜びを与える」アップル
「職場でもない家庭でもない第三の場所を演出する」スターバックス
●ブランドは、製品・サービスの中にゃあない。店舗にもない。店員にさえない。顧客のこころの中にだっけ存在する。こころの中に住み、生き続ける。そりゃあ時空を超える。
●旗が明確なブランドは、顧客が検索で見つけてくれる。顧客から寄ってきてくれる。つまり、旗を明確に、提供価値をわかりやすう、「何の役に立つがか」がはっきりしちょらんといかん。(中略)現実が変化したきに、ブランドも前提を変えざるを得ん。進化したブランディング戦略として、やるべきこたぁ次の三つながよ。
第一に、ウッフィーを増やすことを目的にする。
第二に、とんがる。
第三に、ほんものの価値を創る。
●「狭うすりゃあするばあ広がる戦略的自由度」っちゅう法則がある。フォーカスするフィールドを狭うし、潜在顧客への発信メッセージの内容もそれに応じて絞り込む。絞りゃあ絞るばあ、逆に戦略的な自由度(できることの範囲とバラエティ)が増えるがよ。文字通り、キリキリ絞って、とんがらせる。
●おまさんのビジネスは何ぜよ?
「うどんを作りよります。」
「焼き窯を設置したライトバンであちこち回って、焼きたてピザを販売しよります。」
いずれも「doing」によるビジネス(提供価値)の定義ながよ。
「おいしいランチタイムをうどんで」
「アウトドアで焼きたてあっつあつのピザを味わう喜びを体験してもろうてます。」
こうなりゃあ世界との交流方法、つまり「being」による定義になる。doingからbeingへ。これがブランディングの基本ながぜよ。
●「同業他社が安値攻勢をかけてきたきウチも。」「ライバルがオマケつきマーケティングをしたらウチも。」すべて、「おんなじ土俵で相手に焦点を当てた戦い」ながよ。これじゃあ戦略でのうて(ただの不毛な)競争に過ぎん。「土俵をずらす」あるいは「土俵を自ら作り出す」ことが本来の戦略の姿ながやき。他社に焦点を当てることにエネルギーを費やすがじゃのうて、顧客の課題解決へとエネルギーを集中させる。フォーカスする。
●優れた戦略も、イノベーションも、一握りの天才によってなされるがやない。本書でこれまで見てきた数々のケースが物語っちゅうように、世界に貢献したいっちゅうピュアな動機を持った行動力ある実務家でありゃあ、万人の前にドアは開いちゅうがぜよ。
●現在は幕末・維新と同じ時代感覚、意識、現象がある。非連続、価値観の崩壊、予想もつかん事件の発生。幕末維新に活躍した人らあはみんなあ若かった。(中略)青年やった彼らが持っちょった情報量はおそらく現代に置き換えりゃあ、幼稚園児程度しかなかったがやないか。(中略)それでも幕末維新の青年らあは大きな仕事を成し遂げた。なんでか。彼らに共通しちょったがは高い志ながよ。今、ワシらあが彼らから学ぶべきは、高い志ながぜよ。
●「結局、私って、何?Who am I?」
そう、あり方(being)について考えるこたぁ、「私が私であること」「私として生きるっちゅうこと」について考えることにつながるがやき。ほんで、「何のために働くがか」っちゅう仕事の動機への根本的な自問へとつながるがぜよ。
●ワシゃあ、人生を、「自分の思い通りにならんっちゅうルールでできたゲーム」ととらえちゅうがよ。(中略)思い通りにならん。ほんじゃき修行になる。こころを磨くことができる。
●自分を取り巻く外の世界がいかに変化しょうと、志を高うしっかり持ち、自分を慎みかつ磨いて徳を積む努力を続けるならば、自ずから道も開けてこようっちゅうもんながよ。むしろこの大波の時代、大いなるチャンス到来っちゅうてワクワクして腕まくりする人こそが、大波に乗ることができるがやき。
海図のないハチャメチャな時代こそ、一世紀にたった一度の大チャンス!
共感企業
著者:阪本 啓一
日本経済新聞出版社(2010-09-14)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る
土佐の高知の日本酒蔵元「司牡丹」の公式ホームページは、こちらをクリック!
司牡丹酒造株式会社