「けんど、世の中が変わることを嫌がる者もおる。どう変わったらえいかも人によって考えが違うろう。誰かが、日本の行く道を見定め、声に出してそれを伝え、自らが行動してみんなあを動かしていかんといかんがじゃ。その誰かに・・・わしがなる！」(坂本龍馬・「龍馬伝」より)
昨年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」第38話(小説版では第37話)における、龍馬さんの言の葉ながよ。
慶応2年(1866年)3月、龍馬さんとおりょうさんは薩摩に到着したがよ。
寺田屋で受けた龍馬さんの傷を温泉治療するためで、この旅が日本人初の新婚旅行とも言われちゅうがやき。
ゆっくり温泉に浸かった龍馬さんは、ある決意をもって霧島山に登ることにするがよ。
ほんで、女人禁制の霧島山に自分も一緒に連れていってほしいと懇願するおりょうさんを、龍馬さんは止めるがやき。
吉井幸蔵少年を道案内に、標高1574メートルの高千穂峰を目指す龍馬さん。
ところがおりょうさんが、なんと男装をして着いてくるがよ。
龍馬「わかった。おまんはわしの女房じゃきのぉ。一緒に登ろう。」
幸蔵「山の神様、どうかお許しを！」
幸蔵さんは許しを乞いもって、龍馬さんらあのあとを追うがやき。
やっとの思いで高千穂の頂に到着した龍馬さんらあ一行。
そこにゃあ、天照大神のおん孫のニニギノミコトが日本国を治めるために霧島にご降臨され、頂に鉾を突き刺されたっちゅう「天逆鉾(あまのさかほこ)」が屹立しちゅうがよ。
龍馬「これを、ニニギノミコトが突き刺されたがか。」
幸蔵「はい。乱れておったこん国を自分が治めるち決意した証に。」
龍馬「おりょう・・・わしはの、あの世を見てきたがじゃき。寺田屋から逃げて、材木小屋の屋根で星を眺めちょったときから、薩摩藩邸で目を覚ますまで、わしはあの世に行っちょった。坂本龍馬ゆう男は、あのとき一度死んで、またこの世に生まれてきたがじゃ。もうわしには、怖いものらあ何ちゃあないぜよ。」
そう言うや否や、「天逆鉾」をつかんで引き抜こうとする龍馬さん。
幸蔵「な、何をすっとごわすか！」
怪我をしちゅう左手の激痛もなんのその、渾身の力を込めて抜きにかかる龍馬さん。
龍馬「日本はこんまい島国ぜよ。ほとんどすべての者が、世界のことらあ何ちゃあ知らんかった。ほんじゃき徳川は、260年もの間この国を支配できたがじゃ。けんど、もう時代は変わった。黒船がやってきたときから、日本は世界を相手にせんといかんようになったがじゃき！ぐわあああッ！」
最後の踏ん張りで、ぐわあッと「天逆鉾」が抜けるがやき。
ほんで、手にある「天逆鉾」をカッと見据え、龍馬さんはこの言の葉を語るがよ。
龍馬「けんど、世の中が変わることを嫌がる者もおる。どう変わったらえいかも人によって考えが違うろう。誰かが、日本の行く道を見定め、声に出してそれを伝え、自らが行動してみんなあを動かしていかんといかんがじゃ。その誰かに・・・わしがなる！」
さらに続ける龍馬さん。
龍馬「この坂本龍馬が成し遂げちゃる！これがわしの決意の証ぜよ。えええええい！」
龍馬さんは、「天逆鉾」を振りかぶり、再び地面に突き立てたがやき。
元に戻った「天逆鉾」は、ニニギノミコトが突き刺した「天逆鉾」でありながらも、龍馬さんの手による「天逆鉾」となって地面に屹立したがよ。
龍馬さんは、ここについに初めて、自らが日本を引っ張っていくっちゅうて宣言したがぜよ！
「龍馬伝�掘�(作 福田靖 ノベライズ 青木邦子 NHK出版)より
