「よう考えてつかあさい、後藤様！わしは土佐のためではのうて、日本のために働きゆう。けんど、今言うたわしの考えは、土佐が新しい日本を作る要になるゆうことじゃ。それこそが容堂公の望んじょられることではないですろうか。これほどまで言うたち、気に入らんと言われるなら・・・後藤様はとんでもない大馬鹿者じゃ！」(坂本龍馬・「龍馬伝」より)
昨年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」第40話(小説版では第39話)における、龍馬さんの言の葉ながよ。
大政奉還・・・徳川幕府が自ら政権を返上すりゃあ、戦をする必要がなくなり、志ある者らあの手で日本を異国に負けん国へと再生できる・・・。
日本人がみんなあ笑うて暮らせる国づくりが見えてきたがやき。
ついに龍馬さんは、道を見出だしたがぜよ！
けんど、龍馬さんが手を組ませた薩摩と長州は、あくまで武力倒幕しかないと勢いづいちゅうがよ。
龍馬さんは、土佐を使うて大政奉還を成功させるため、憎き仇である土佐藩参政・後藤象二郎さんと会うことを決断するがやき。
一方、象二郎さんも山内容堂公の命令で薩長に近づくため、龍馬さんに会うことを決断するがよ。
慶応3年1月12日、ついにその日がやってきたがやき。
これが世に言う清風亭会談ながよ。
象二郎さんは、場合によっちゃあ龍馬さんを斬り捨てろうと、隣の部屋に配下の上士らあを待ち構えさせるがやき。
一方龍馬さんも、亀山社中の仲間を庭に潜まいて、いつじゃち部屋に雪崩れ込む準備をしちょったがよ。
緊迫した空気の中、龍馬さんと象二郎さんの会談対決が始まるがぜよ。
今こそ徳川幕府に大政奉還を迫る絶好の機会じゃと、熱う語る龍馬さん。
徳川が政権を手放すわけがないと断言する象二郎さん。
ほんじゃき土佐藩に働いてもらいたいと、さらに龍馬さんは語るがやき。
龍馬「薩長に近づきたいがですろう、土佐は。近づくがやったら、がっちりと手を組む覚悟がないといけませんねや。幕府にも薩長にもえい顔するつもりやったら、結局はどっちも敵に回してしまうぜよ。」
象二郎「おんしは、大殿様が徳川慶喜公と仲がえいゆうがを知らんがか！」
龍馬「そう！それが都合のえいところじゃき。土佐が寝返ったとなったら、幕府にとってこれほどの痛手はないですろう。大政奉還を迫るには、この上ない形ぜよ。」
象二郎「やめやッ！土佐が幕府に戦を仕掛けるらあ、天地がひっくり返ってもないろう！」
象二郎さんは座布団を蹴って立ち上がり、隣室の上士らあは今まさに飛び出そうとしよったがよ。
龍馬「それでのうてはいかんですき、後藤様。土佐は徳川には刃は向けん。その考えが薩長を抑えてくれるがじゃき。」
象二郎「何・・・！？」
姿勢を改め、畳に手をついて、龍馬さんはこの言の葉を語るがやき。
龍馬「よう考えてつかあさい、後藤様！わしは土佐のためではのうて、日本のために働きゆう。けんど、今言うたわしの考えは、土佐が新しい日本を作る要になるゆうことじゃ。それこそが容堂公の望んじょられることではないですろうか。これほどまで言うたち、気に入らんと言われるなら・・・後藤様はとんでもない大馬鹿者じゃ！」
象二郎「何いいいぃ！」
象二郎さんが怒声を上げると同時に襖を押し倒して上士らあが踏み込んできて、庭からは亀山社中の一同が障子を蹴破って押し入ってくるがよ。
双方が刀を突き付けあう只中にあって、微動だにせんと象二郎さんを見据える龍馬さん。
象二郎さんもまた龍馬さんを睨みつけちゅうがやき。
上士も亀山社中一同も怒り狂い、いつ斬り合いになってもおかしゅうない緊迫した状況の中、象二郎さんが大喝するがよ。
象二郎「静まれ！静まらんかえ！」
象二郎「まっこと恐れを知らん男じゃのぉ、おんしは。」
龍馬「誰かに恐れ入っちゅう暇はないですき。」
こん時、象二郎さんの表情が緩んだがやき。
象二郎「・・・わかった。おんしの話に乗ろう。」
龍馬「ありがとうございます。」
象二郎「けんど条件がある。亀山社中は土佐藩の下に入りや。」
龍馬「土佐藩と同等の立場でえい言われるなら、手を結びましょう。」
象二郎「・・・えいろう。土佐は薩長を利用する。おんしの役目はその橋渡しじゃ。必ず土佐が、日本の要になると約束しいや。」
龍馬「約束のシェイクハンドじゃ。」
龍馬さんと象二郎さんは、ついに固い握手を交わしたがよ。
土佐の上士と下士が初めて手を結んだ、歴史的瞬間やったがぜよ！
「龍馬伝�検�(作 福田靖 ノベライズ 青木邦子 NHK出版)より
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