「土佐には、桂浜ゆう雄大な浜があってねや、時々鯨が見えるがじゃき。その大きな鯨を、土佐の漁師らあが捕まえるがぜよ。・・・ほんでの、土佐の大殿様は、鯨が海の水を飲むように酒を飲まれるそうじゃ。・・・そのお殿様を、わしは説得しに行く。」(坂本龍馬・「龍馬伝」より)
昨年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」第45話(小説版では第44話)における、龍馬さんの言の葉ながよ。
慶応3年(1867年)9月20日龍馬さんは、土佐藩の力を強めた上で幕府に大政奉還を迫るっちゅう目的のためのミニエー銃一千挺を乗せた船で、下関を訪ねたがやき。
3ヶ月ぶりに龍馬さんに会えて、笑みが弾けるおりょうさん。
けんど、翌日は土佐に発ってしまうっちゅう龍馬さん。
ほいたらせめて1日だっけやち、龍馬さんと水入らずで過ごしたいと願うおりょうさんながやけんど、奇兵隊の連中が龍馬さんと酒を酌み交わしたいと押しかけてくるがよ。
しぶしぶ承諾するおりょうさん。
すぐ戻るき、風呂を沸かして待っちょってくれっちゅうて出て行ったに、龍馬さんは料亭で酔い潰れてしもうて、朝帰りしてしまうがやき。
龍馬さんの頬に、おりょうさんの平手打ちが飛ぶがよ。
おりょう「どうして帰ってきてくれはらへんやったんどす！わてはもう・・・龍馬さんと会えへんのやないかて・・・」
夫婦水入らずで過ごせる時間はわずかしかないっちゅうて、おりょうさんは涙ぐむがやき。
そこに長州の三吉慎蔵さんが入ってきて、波が高うて船が出せんき、もう一日出発が延びるっちゅうて知らせるがよ。
パッと顔を輝かせるおりょうさん。
こうして龍馬さんとおりょうさんは、晴れて二人でのんびり楽しゅう一日を過ごすがやき。
その夜、二人で夜具の中で添い寝しもって、龍馬さんはおりょうさんに、この言の葉を語るがぜよ。
龍馬「土佐には、桂浜ゆう雄大な浜があってねや、時々鯨が見えるがじゃき。その大きな鯨を、土佐の漁師らあが捕まえるがぜよ。・・・ほんでの、土佐の大殿様は、鯨が海の水を飲むように酒を飲まれるそうじゃ。・・・そのお殿様を、わしは説得しに行く。」
この比喩だっけで、龍馬さんがどれっぱあの怪物を相手にせにゃあならんか、おりょうさんにゃあ容易に想像がついたがよ。
おりょう「大丈夫。龍馬さんなら出来ます。志を成し遂げて、わての元に帰ってきとくれやす。」
龍馬「わしを信じちゅうがか、おりょう。」
おりょう「当たり前や。わては、坂本龍馬の妻どす。」
ひたむきな目で龍馬さんを見つめるおりょうさん。
翌朝、慶応3年9月22日、龍馬さんは土佐に向かうために、下関を発ったがやき。
龍馬「待っちょれよ、おりょう。」
見送るおりょうさんにニッコリと笑いかけ、船上の人となる龍馬さん。
龍馬さんとおりょうさん、最後の別れやったがぜよ。
「龍馬伝�検�(作 福田靖 ノベライズ 青木邦子 NHK出版)より
