今回は、高知県出身の直木賞作家山本一力さんが、遂に郷土の偉人を主人公にした歴史大河小説の第1巻を2つも刊行されたき、その2冊をご紹介さいていただきますぜよ。
その郷土の偉人の1人目は、ジョン・マンことジョン万次郎(中浜万次郎)さん、もう1人は何とあの坂本龍馬さんながよ!
まず、万次郎さんを主人公にした1冊は、「ジョン・マン」〈波濤編〉(山本一力 著 講談社 1600円+税 2010年12月31日発行)ながやき。
昨年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」じゃあ、トータス松本さんが万次郎さん役で出演され、こぢゃんとえい味を出しちょったき、ご覧になられた方は記憶されちょりますろう。
けんど、意外と万次郎さん言うたち、どんな人やったかをご存じない方が多いろうきに、ちくと簡単にプロフィールをご紹介しちょかにゃあと思いよったら、この書籍のオビの裏側に書いちゃある言葉が見事な万次郎さんの紹介になっちょったき、ちくと以下にそれを紹介さいていただきますぜよ。
「わずか十四歳。寺子屋にも満足に通えなかった貧しい漁師が鎖国日本から身ひとつで漂流。
初めて西洋文明(アメリカ)の中で暮らした日本人となり、初めて欧米の高等教育を受けた日本人となり、初めて世界の大洋を巡った日本人となり、ゴールドラッシュのカリフォルニアで金を掘り、唯一、自力で帰国を果たした日本人漂流民となった。
帰国から二年後、あのペリー艦隊がやってくる。
この男がいなければ、日本は植民地になっていたかもしれない。」
これが、偉大な漂流者、ジョン・マンことジョン万次郎さんながよ。
ほんでこの書籍「ジョン・マン」〈波濤編〉は、そんな万次郎さんが漂流して、アメリカのホイットフィールド船長率いる捕鯨船ジョン・ハウランド号に助けられるまでを描いちゅうがやき。
またこの描き方、盛り上げ方が、さすがは一力さん、ニクイ演出ながよ。
まずはアメリカのホイットフィールド船長の側から描き、続いて土佐国中ノ浜(現・土佐清水市)の万次郎さんを描き、この本来まったく接点があるはずもない2人を、交互に描いていくがやき。
まるで運命に導かれるように、見えない糸にたぐり寄せられるように、近づいていくホイットフィールド船長と万次郎さん。
予想外に鯨が捕れいで、予定を変更して日本近海の鳥島へ向かうホイットフィールド船長とジョンハウランド号。
予想外の暴風に遭うて遭難し、鳥島に漂着した万次郎さんらあ土佐の漁師。
万次郎さんらあが鳥島に漂着してから143日目、遂に万次郎さんらあはジョンハウランド号を発見するがぜよ!
まっこと、血湧き肉踊る歴史大河小説の第1巻にふさわしい奇跡の出逢いのラストは、心に沁みるばあ感動的ながよ。
こりゃあ是非とも数年後、この小説を原作として、万次郎さんを主人公にしたNHK大河ドラマを放送していただきたいもんながやき!
さて続いては、龍馬さんを主人公にした「龍馬奔る(はしる)」〈少年篇〉(山本一力 著 角川春樹事務所 1600円+税 2011年7月8日発行)をご紹介しますぜよ。
龍馬さんと言やあ、司馬遼太郎さんを筆頭に、たくさんの方々が既に小説にしちゅうし、昨年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」も記憶に新しいろうき、いったい一力さんはどんな小説を描いてくれるがやろうと思いよったら、龍馬さんとともに中岡慎太郎さんにスポットを当てて、この2人を中心に描いていくっちゅう内容やったがよ。
また、龍馬さんを描いたこれまでの作品は、たいてい「坂本龍馬」っちゅう人間が出来上がったところから始まるがやけんど、一力さんは、龍馬さんも慎太郎さんも、彼らが生まれる以前、その生まれ落ちた環境から精緻に描いていくっちゅうやり方やったがやき。
このやり方で一力さんは、「あの時代になぜああいう男が出来上がったのか」(「ランティエ」2011年9月号 特集:山本一力の世界 角川春樹事務所)っちゅうバックボーンから描きたかったと、インタビューでは答えられちゅうがよ。
また一力さんは、「本気になって調べていったら、中岡慎太郎という存在が非常に重要なんだというのが分かってきたんだな。慎太郎がいたからこそ、龍馬がいたんだよ。」(前記「ランティエ」より)とも述べられちゅうがやき。
ほんじゃき「龍馬奔る」〈少年篇〉じゃあ、龍馬さんの生まれた坂本家、その2年半後に慎太郎さんの生まれた中岡家と、両家を交互に描いていくがよ。
しかも、意外な形で、かなり早い段階でこの2人の人生をクロスさせるあたり、まっことニクイ演出もあるがやき。
この〈少年篇〉の物語は、龍馬さんと慎太郎さんが生まれ、それぞれがそれぞれの家庭でたくさんの人々の愛情に育まれもって、また子供なりの通過儀礼や肝試しらあを経て、すくすくと育っていく姿が、まっこと活き活きと描かれちゅうがよ。
11歳になった龍馬さんは、室戸岬の鯨組「津呂組」に預けられ、そこで男を磨くことになるがやき。
そんな中、最愛の母幸(こう)の危篤の知らせが届く・・・。
このあたりまでが、〈少年篇〉の内容ながよ。
これまた、こぢゃんと骨太な、一力さんのライフワークといえるような凄い歴史大河小説になりそうなき、まっこと楽しみながやき。
また、前記の「ランティエ」2011年9月号「特集:山本一力の世界」に、文芸評論家の細谷正充さんが「龍馬奔る」〈少年篇〉についての評論を書かれちゅうがやけんど、「土佐をまるごと描写するための主人公・坂本龍馬に刮目せよ」っちゅうタイトルながよ。
この評論にゃあ、以下の通り書かれちゅうがやき。
『さらに本書を読んでいると、作者が坂本龍馬を主人公にした、別の理由が見えてくる。おそらく龍馬は、土佐を描くための器なのだ。
土佐の城下の子供がいたずらをして詫びるときにいう「ごめんは東、伊野は西」。土佐特有の制度である一領具足の故事に倣った食事。鏡川の風景。慎太郎が挑む、巻ノ淵試し。空海の足跡。土佐西部の名酒「司牡丹」・・・。
土佐に関するあれこれが、これでもかと詰め込まれている。』
確かに「龍馬奔る」〈少年篇〉にゃあ、土佐に関する名所、土地柄、人物、気風らあが一力さんならではのリアルで活き活きとした筆致で見事に描かれちょって、土佐を丸ごと読者に提供しょうとしゆうっちゅうんは、一力さんのもうひとつの目的ながかもしれんと思えてくるがよ。
それと・・・そうながよ!「龍馬奔る」〈少年篇〉にゃあ、何ヵ所かに「司牡丹」が登場しちゅうがやき。
ちなみに「ジョン・マン」〈波濤編〉にも、「司牡丹」が何度か登場しちゅうがよ。
一力さんは、以前に「牡丹酒」〈深川黄表紙掛取り帖(二)〉(山本一力 著 講談社の単行本と講談社文庫の文庫本あり)っちゅう、「司牡丹」をストーリーの中心においた時代小説を書かれちゅうがやけんど、今回は何と土佐を代表する2人の英雄、龍馬さんと万次郎さんを主人公にした2つの小説にも、「司牡丹」を登場さいてくださっちゅうがやき。
一力さん、まっことありがとうございます!感謝感謝ぜよ!
そういう意味じゃあ、「司牡丹」がどんな場面で何ヵ所登場するかを見つける楽しみもある、「ジョン・マン」〈波濤編〉と「龍馬奔る」〈少年篇〉。
是非ご一読をお薦めしますぜよ!
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