2013年01月19日

「人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか」は高知県の参考書ぜよ!

 今回のお薦め書籍は、「人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか」〜スペイン サン・セバスチャンの奇跡〜(高城剛 著 祥伝社新書 2012年7月10日発行 780円+税)をご紹介しますぜよ。「人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか」.jpg「人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか」裏表紙.jpg












 この書籍は、たまたま書店で手に取りパラパラとめくって見よったがやけんど、こりゃあもしかしたら土佐の高知にとってこぢゃんと参考になる書籍かもしれんっちゅう直感がビビビッと来たもんやき、思わず買うてしもうたもんながよ。口絵1.jpg口絵2.jpg



 ほんで、読了してみてあらためてこの書籍――つまり、スペインはサン・セバスチャンの地域戦略が、高知県にとって間違いのう、こぢゃんと参考になると確信したがやき。


 土佐の高知で食や観光、地域振興や行政らあに関わっちゅう方々にとっちゃあ、ワシゃあ必読の書籍やと思うきに、そういう方々は是非皆さんお読みいただけましたら幸いながよ。


 さて、スペインのバスク自治州にある大西洋に面した人口わずか18万人のちんまい街サン・セバスチャンは、いまミシュランの三つ星レストランが3店、二つ星レストランが2店、一つ星レストランが4店もあり、人口あたりのミシュランの星の数は、ダントツ世界一やっちゅうがやき。


 しかも、世界の飲食業関係者の投票による英国「レストラン」誌「世界のベストレストラン50」のトップ10に、このちんまい街から2つのレストランが入るっちゅう快挙も成し遂げちゅうっちゅうがよ。


 また、星付きらあ関係ないようなその辺の街の立ち飲みバルらあも、最高の味を提供しゆう店が足るばあ軒を連ねちょって、数百円ばあから美味しいご飯が食べ歩きできるき、ちんまいバルのハシゴツアーが観光の目玉の一つにもなっちゅうっちゅうがやき。


 さらに、元々は主だった産業ものうて、観光の目玉になるような世界遺産や美術館ものうて、ジャンボ機どころか中型機も停まらんような辺境の地で、豊富な海の幸や山の幸らあの素材ばあしかないっちゅう街やったがが、そんな世界に誇る美食の街となったがは、わずかここ10年ちょいの話やっちゅうがやき、ますますもって高知県が参考にするにピッタリやと思わんかよ?


 ほいたら内容やけんど、まず第1部は、「なぜスペインに観光客が集まるのか?」(〜徹底した「地域分権」という戦略〜)ちゅう内容が書かれちゅうがよ。


 ほんで著者は、観光不動産バブルはさておいて、スペインの観光戦略成功の秘訣は、国家として戦略立案するがやのうて、その地をもっともよう知っちゅうその地域の自治体に徹底的に戦略を考えさいて行動さいた、つまり観光に関しちゃあ地域分権を徹底さいちゅう点にあるっちゅうがやき。


 さらに、そんな観光先進国スペインでももっとも成功しちゅうバルセロナの観光戦略を立案実行しゆう団体「ツーリズム・デ・バルセロナ」についても、取り上げちゅうがよ。


 「ツーリズム・デ・バルセロナ」は、1994年にバルセロナ市とバルセロナ商工会議所が合同で設立した半官半民の観光誘致のための営利団体で、スペイン国家財政破綻が騒がれゆういまも、どこ吹く風で儲かりゆうっちゅうがやき。


 ほんで著者は、バルセロナの観光戦略でもっとも大切にされちゅうことは、「市民と観光客が一体になる」ことやと感じたっちゅうがよ。


 簡単に言うたら、観光客をお客様扱いせんと、遠くから来た友達みたいに接することやっちゅうがやき。


 彼らは、普段市民がその地で楽しみゆうことを、そのまんま広げるようなこと、それを徹底しちゅうと強調するっちゅうがよ。


 ここにゃあ「作られた」エンターテイメントや、わざとらしい「おもてなし」はないっちゅうがやき。


 これが、嘘がつけんインターネット時代のもっとも特徴的な観光戦略で、バルセロナ成功の秘密やと、著者は言うがよ。


 21世紀における最大の産業は観光産業ながやき、この考え方は重要なポイントながやき。


 また、こりゃあどの都市にもできることやないろうけんど、スペイン人の陽気さ、けんど裏を返しゃあいい加減さ、のえい面だっけを上手に切り取るような手法は、学ぶべきポイントがあるはずやっちゅうがよ。


 このあたりは、まさに高知県にもピッタリやと考えるがは、ワシだっけやないがやないろうかのう!


 ほんで第2部は、いよいよ「サン・セバスチャンはなぜ美食世界一の街になれたのか」ながやき。


 まず、今日のサン・セバスチャン成功の物語は、1970年代後半からはじまるっちゅうがよ。


 世界中で放蕩暮らしをしよったこの街出身の「不良」やったある若いシェフが、フランスの料理革命と言われたヌーベル・キュイジーヌ(「あたらしい料理」の意)と出会うて、こぢゃんと感銘を受けたっちゅうがやき。


 ほんで、このあたらしいフランス料理界の革命に、若きサン・セバスチャンのシェフらあがこぢゃんとインパクトを受け、まるでティーンエイジャーがはじめてロックにハマッてバンドをはじめるみたいに、自分らあの手で自分らあの「ヌエバ・コッシーナ」(ヌーベル・キュイジーヌのスペイン語読み)を作り上げていったっちゅうがよ。


 いままでのクラシックな料理法やのうて、地元の素晴らしい素材を活かしもって、若いシェフらあが旅をしもって見てきた世界中のフレーバーを織り込み、見たこともない料理を作りはじめ、辛抱強う斬新な挑戦をしていったっちゅうがやき。


 ほんで、気がつきゃあヌーベル・キュイジーヌの世界的ブームは去り、「ヌエバ・コッシーナ」の方が世界中を席巻しちょったっちゅうがよ。


 サン・セバスチャンからはじまったこのムーブメントは、スペイン中に伝播し、世界ナンバーワンレストランと言われた「エル・ブリ」(2011年夏に閉店)によって、さらに世界にヌエバ・コッシーナの名を知らしめることになったっちゅうがよ。


 ヌエバ・コッシーナのシェフらあは、何じゃち泡状にするエスプーマを使うたり、液体窒素を使うて何じゃち瞬時に凍らせたり、「焼く」「蒸す」「煮る」に次ぐ第四の調理法と言われる真空調理をしたりと、あたらしい調理技法やあたらしいキッチンツールらあを続々と取り入れ、これまで誰っちゃあ見たことも食べたこともなかったあたらしい料理を次々と生み出していったっちゅうがやき。


 ほんで、このようなあたらしいツールを使うて、まるで科学みたいに作られた料理は、今日「分子料理」と呼ばれゆうっちゅうがよ。


 あらゆる料理は物理化学の式で表せるとし、「G」(ガス=気体)「W」(ウォーター=液体)「O」(オイル=油脂)「S」(ソリッド=固体)の食材の四状態と、「分散」「併存」「包含・結合」「重層」の分子活動の四状態の組み合わせによって表現できるっちゅうことながやと。


 ほんでさらにサン・セバスチャンじゃあ、他の街にゃあない特別な施設、化学実験室みたいな「料理研究室」がレストランに併設されるようになったっちゅうがやき。


 ところが、こんな奇抜に見える料理やけんど、全部伝統料理が基本になっちゅうっちゅうがぜよ。


 それらあは、サン・セバスチャンの伝統料理と、「見た目が同じ」か「素材が同じ」かの二方向しかないっちゅうがよ。


 例えば著者が江戸前寿司をサン・セバスチャンの料理研究室風に強引に解釈すりゃあ、ピンクのピンポン玉みたいな一口サイズの食べ物があって、真ん中に細い緑の線が引かれちょって、実はそりゃあマグロと酢メシ、すなわちトロの握りを分子調理法で再構築したもんで、ピンポン玉の真ん中にある細い緑の線は、ワサビっちゅうことになるっちゅうがやき。


 これが伝統料理の再解釈っちゅうことで、先の二方向の後者、「素材が同じ」にあたるっちゅうがよ。


 さらに著者は、どちらにしたち料理界は、いま革命が起きゆうがに間違いはのうて、世界的な方向としては「伝統的な味を守る」ことと「あたらしい表現の追求」の二方向同時に進みゆうっちゅうがやき。


 あるいはもっと進んで、「あたらしい表現の追求」をすることで、伝統的な味を新たに捉え直す時期にきちゅうがかもしれんっちゅうがぜよ。


 ほんで著者は、日本は「あたらしい表現」を料理で追求することに関して、世界的な後進国になってしもうたっちゅうがよ。


 実は、サン・セバスチャンにその秘密が隠されちゅうっちゅうがやき。


 そりゃあオープンマインド、「皆で教えあう」ことやっちゅうがよ。


 これやと、同じ仲間のレベルがいっせいに上がるだけやのうて、あたらしい料理界の変化に大勢で取り組むきに、お互いの理解度が高まるっちゅうがやき。


 さらに、日本料理界みたいに極端な徒弟制度みたいなもんがないき、若い料理人じゃちこぢゃんと楽しゅう料理することを覚えるっちゅうがよ。


 ここにサン・セバスチャンのレストランのクオリティが急速に上がった最大の秘密があるっちゅうがやき。


 また、サン・セバスチャンの人らあは、何より美食に目がのうて、外食率がこぢゃんと高いがも特徴で、このこともレストランのクオリティが高うなる要因になっちゅうっちゅうがよ。


 このあたりも、外食率がこぢゃんと高い高知にそっくりやないかよ?


 さらに著者は、サン・セバスチャンの食材や伝統的な料理らあもズラリと紹介しちゅうがやけんど、シシトウ料理があったり、唐辛子の酢漬けがあったり、ドロメみたいにウナギの稚魚を使うてニンニクとタカの爪を入れたオリーブオイルで炒めた料理があったり、さらに美味しいカツオ料理までがあったりと、土佐料理と似た点が散見されるがやき。


 さらに「美食倶楽部」っちゅう集団の存在も、サン・セバスチャンの美食の秘密のひとつやっちゅうがよ。


 こりゃあ、仲のえい男同士が集まって、みんなあで料理し合うて楽しみ合うっちゅう団体で、サン・セバスチャンにゃあ100軒以上の美食倶楽部が存在しちゅうっちゅうがやき。


 こりゃあこの地域の女性が、意外と家庭内で力が強いき、男らあが息抜きで集まる場所として存在しちゅうらしいがよ。


 女性が強いっちゅうんも、土佐の高知と似いちゃあせんかよ?


 さらに料理コンクールがいくつも開催されよったり、世界初の料理学会を開催したり、料理人がサッカー選手と並ぶスターやったり、世界でも珍しい四年制の料理大学を誕生さいたりと、様々な手を尽くして、サン・セバスチャンは美食世界一の街になっていったっちゅうがやき。


 ほんでスペインは、国を挙げて料理を知的産業として輸出するっちゅう挑戦を始めたっちゅうがよ。


 こりゃあ例えば特産品を作って海外に売り込みにいくっちゅうような発想たぁ根本的に異なるっちゅうがやき。


 なんでかゆうたら、特産品、つまり完成品を海外に輸出しただっけじゃあ、その売り上げだけしか収入はないがよ。


 彼らはそうやのうて、スペインのタパスやピンチョスっちゅうような文化そのものを輸出しょうと目論んじゅうっちゅうがやき。


 こうした文化そのものが世界に広がりゃあ、その経済効果は計り知れんがよ。


 美味しいもんを食べりゃあ本場に行きとうもなるろうし、その国の食材や料理人が世界中から求められることにもなるっちゅうことながやき。


 アメリカがハリウッド映画を世界に輸出したように、スペインはいま国家として「食」を世界に輸出する計画を持っちゅうっちゅうがぜよ。


 最後に著者は、「サン・セバスチャンの成功から日本が学ぶべきこと」っちゅうまとめを述べられちゅうがよ。


 第一番目に著者は、「パッション」を挙げるがやき。


 ほんで二番目にゃあ、「世界の中での自分らあを知る」っちゅうことを挙げるがよ。


 地元の食材が一番美味しいと思うちゅう人らあてどこにやちおるけんど、世界の端から端まで見渡して、自分らあの可能性を客観的に理解しちゅう人らあて、どれっぱあおるろうかっちゅうがやき。


 さらに、時代性も大切やっちゅうがよ。


 伝統的な味を守りもって、いまの時代に合うように再提案することが、多くの人らあに好まれる理由やっちゅうがやき。


 そのためにゃあ、「いま」を理解する必要があるっちゅうがよ。


 ほんで「いま」を理解するためにゃあ、歴史を理解する必要があるっちゅうがやき。


 日本の山河豊かで美味しい食材が獲れる小都市にやち、サン・セバスチャンみたいに世界的な観光都市に成長できる可能性がある街は多いと思うけんど、一番欠けちゅう視点は、「世界の中での自分らあを知る」ことと、「いま」を理解することにあるっちゅうがよ。


 さらに、サン・セバスチャンで学んだもっとも大切な教えは、控えめな気持ちやっちゅうがやき。


 この街の世界一流レストランは、みんなあ海外らあに支店を出そうたぁ考えてないようやっちゅうがよ。


 なんでかゆうたら、この地で獲れた産物をここで出すがが彼らあの姿勢であり、なによりこの地を誰より愛しちゅうきやっちゅうがやき。


 ほんじゃき、彼らのレストランビジネスは、ビジネスやのうて、この地の産業やっちゅうがよ。


世界を知る。
そのうえで己を知る。身の丈を知る。
古いモノを守り、あたらしいモノを融合さいて「いま」を考える。
ほんで、オープンな姿勢で、多くの者とシェアしてゆく。


 この次の時代のヒントを、世界一の美食の街と言われるサン・セバスチャンの食事や、ここで働く多くの人と触れおうて、なにより感じると、著者は言うがやき。


 ほんで最後に著者は、日本の小都市は山河溢れる自然が素晴らしい場所が多くあり、この、いまはちんまいけんど、やがて大きゅうなる可能性の集合が、日本の次世代の可能性やと、世界を回って思うっちゅうがよ。


 土佐の高知も、そんな可能性をこぢゃんと秘めちゅうと、まっことワシゃあつくづく思うがぜよ!









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