まず、オビにも書いちゃある「なんで、高学歴の人物が、深い知性を感じさせんがか？」っちゅう疑問から、本書はスタートするがやき。
これに対して著者は、「知性」と全く逆の言葉である「知能」を挙げ、二つ並べて定義を述べるがよ。
「知能」たぁ、「答えの有る問い」に対して、早う正しい答えを見出だす能力。
「知性」たぁ、「答えの無い問い」に対して、その問いを問い続ける能力。
一人の人間が生涯を賭けて問うたち、その答えを得ることができん問い・・・人類がこれから百年の歳月を賭けて問うたち、容易に答えの得られん問い・・・そうした問いを問い続ける力が、「知性」と呼ばれるもんやろうっちゅうがやき。
さらに著者は、「答えの無い問い」は、決して、深遠な哲学的領域の中にだっけあるがやのうて、ワシらあの日々の仕事の中にやち、無数にあるっちゅうがよ。
たとえば、一人の部下に転属を命じるか否かっちゅうこと一つやち、ホンマは、深う考えるやったら「答えの無い問い」やっちゅうがやき。
ほんで、この事実を知って判断に向かうマネジャーと、この事実に気がつかんと判断に向かうマネジャーは、その「知性」の在り方において、大きな違いが生まれてくるっちゅうがよ。
「知能」が、「答えの無い問い」に直面したとき、何が起こるかっちゅうたら、「割り切り」やっちゅうがやき。
考えたちなかなか答えの出ん問題を前にしたとき、「知能」は、この「割り切り」っちゅう行為に走るっちゅうがよ。
著者は、「割り切り」っちゅう判断の奥にある、「楽になりたい」っちゅう心の姿勢が問題であるとし、文芸評論家・亀井勝一郎さんの言葉を紹介するがやき。
「割り切りたぁ、魂の弱さぜよ」
精神が「楽になる」ことを求め、「割り切り」に流されていきゃあ、深う考えることができんなって、「答えの無い問い」を問う力、「知性」の力が衰えていくっちゅうがよ。
ほいたら、「割り切り」をせんずつ、この忙しい現代に、迅速な意思決定をすることができるがかっちゅうたら、著者はできるっちゅうがやき。
そりゃあ、「割り切り」と対極にある、「精神の弱さに流されん迅速な意思決定」・・・「腹決め」やっちゅうがよ。
「これで行くしかないか・・・」っちゅうて、腹も定まらんと、受動的に意思決定するがやのうて、「これで行こう！」っちゅうて、腹を定め、能動的に意思決定することやっちゅうがやき。
「割り切った」心の姿勢やのうて、「腹を決める」心の姿勢やっちゅうがよ。
「割り切り」と「腹決め」の何が違うかっちゅうたら、前者は心が楽になっちゅう、後者は心が楽になってないっちゅうがやき。
ほんで、この二つの心の姿勢がもたらすもんは、大きゅう違うっちゅうがよ。
おそらく、「割り切り」をしたマネジャーは、転属を命じた部下のことらあ、まものう忘れていくろう。
一方「腹決め」をしたマネジャーは、転属を命じた部下のことを、時折、思い出し、「彼は、営業で頑張りゆうろうか・・・」「何年かしたら、またこの部署に戻しちゃろうか・・・」っちゅう形で、心に抱き続けるやろうっちゅうがやき。
ここで著者は、臨床心理学者の河合隼雄さんの「愛情たぁ、関係を断たんことぜよ」っちゅう言葉を紹介するがよ。
後者のマネジャーは、「心の中で関係を断たん」っちゅう形で、かつての部下に対する愛情を抱き続けることができるろうき、そりゃあそれができるばあの「精神のエネルギー」を心に宿しちゅうきやっちゅうがやき。
ほんで、その精神エネルギーこそが、「知性」っちゅうもんの根底にある力、「知性」を磨き続けるために求められる力やっちゅうがよ。
そのエネルギーがあるきにこそ、ワシらあは「答えの無い問い」を、問い続けることができるっちゅうがやき。
さらに著者は、「知性」と似て非なるもう一つの言葉、「知識」を挙げるがよ。
どれっぱあ該博な「知識」を身につけたち、それが「知性」を身につけたことを意味するわけやないがは、どういてか？・・・と、著者は問いかけるがやき。
ほんで、そりゃあ「知性」の本質は、「知識」やのうて、「智恵」やからやっちゃうがよ。
「知識」たぁ、「言葉で表せるもん」であり、「書物」から学べるもん。
「智恵」たぁ、「言葉で表せんもん」であり、「経験」からしか学べんもん。
例えば、「直観力」「洞察力」「大局感」っちゅう能力は、「知性」と呼ばれる能力の重要な核を成しちゅうけんど、これらあは、「職業的な勘」や「プロの直観」らあっちゅう言葉があるように、永年の「職業経験」や「現場経験」を通じてしか掴めんもんやっちゅうがやき。
さらに、それらあだけやのうて、実は、「知性」と呼ばれる能力の核心は、「経験」を通じてしか身につかん、人間としての極めて高度な能力やっちゅうがよ。
ほんで著者は、ここで、なんで高い「知能」を持ち、豊かな「知識」を身につけ、「高学歴」を誇る人物が、必ずしも、深い「知性」を感じさせんがかが、理解できつろうっちゅうがやき。
さらに、ワシらあが真に「知性を磨く」ためにゃあ、二つのことが求められるっちゅうがよ。
一つは、「答えの無い問い」を問う力を身につけること。
もう一つは、「知識と智恵の錯覚」の病に陥らんこと。
この二つのことを心がけるだっけで、ワシらあの「知性」は確実に磨かれていくっちゅうがやき。
さらに著者は、「知性」と似て非なる第三の言葉を挙げるがよ。
そりゃあ「専門性」やっちゅうがやき。
ワシらあは、「高度な専門性」を持った人物を「高度な知性」を持った人物と考える傾向があるけんど、21世紀において、ワシらあが理解しちょかなイカン、一つの現実があるっちゅうがよ。
そりゃあ、高度な「専門性」を持った優秀な「専門家」が、問題を解決できんっちゅう点ながやき。
例えば、地球温暖化の問題しかり、個別の専門分野を超えた、極めて学際的なテーマやきに、様々な専門家の智恵を結集せんと解決できんっちゅうがよ。
さらに、この問題は、様々な専門家の智恵を集めた、総合的なアプローチが必要やき、容易に問題が解決できんっちゅうがやき。
けんど、現実にゃあ、「学際研究」や「総合研究」っちゅうような名を冠した研究所やシンクタンクやち、ただ様々な分野の専門家が「同居」しちゅうだっけで、そこに何か優れた「学際的アプローチ」や「総合的アプローチ」の手法が開発され、活用されゆうわけやないっちゅうがよ。
ほんで著者は、時代の最先端のテーマ「複雑系」や「複雑性」を掲げ、まさに学際的な研究を進めゆう、アメリカの「サンタフェ研究所」での会話(1997年頃)を思い出すっちゅうがやき。
著者が、「サンタフェ研究所は、今後、どのような分野の専門家(スペシャリスト)を必要としちゅうがか？」と訊ねたところ、「この研究所にゃあ、専門家(スペシャリスト)は、もう十分におる。ワシらあが本当に必要としちゅうがは、それらあ様々な分野の研究を『統合』する『スーパージェネラリスト』や」っちゅう答えが返ってきたっちゅうがよ。
「スーパージェネラリスト」・・・サンタフェ研究所が求めゆうがは、様々な専門分野を、その境界を超えて水平的に統合する「水平統合の知性」を持った人材のことやっちゅうがやき。
けんど、この瞬間に著者の頭の中を巡ったがは、実は、それたぁ違う、もう一つの知性を持った「スーパージェネラリスト」やったっちゅうがよ。
そりゃあ、「垂直統合の知性」を持ったスーパージェネラリストやっちゅうがやき。
つまり、「専門の知性」やのうて「統合の知性」を持った人材であり、それも「水平統合の知性」やのうて「垂直統合の知性」を持った人材やっちゅうがよ。
そんな「垂直統合の知性」の格好の事例として、著者は映画「アポロ13」を紹介するがやき。
これまで誰っちゃあ経験したことが無い、前代未聞の事故。
絶望的な極限状況に置かれた、三人の乗組員の生命。
専門家らあも解決策を見出だせん、想像を絶する難題。
こうした難題を前にして、NASAの専門家らあを率い、その難題に粘り強う取り組み、最終的に、それを成功裏に解決した人物(ジーン・クランツさん)・・・まさに「知性」たぁ、容易に答えの見つからん問いに対して、決して諦めんと、その問いを問い続ける能力のことやき、彼がその意味での「知性」を持っちょったこたぁ、疑いないっちゅうがよ。
けんど、それだけやのうて、彼の姿は、優れた「知性」が持つべき、もう一つの能力も示しちゅうっちゅうがやき。
それこそが、「垂直統合」の思考やっちゅうがよ。
そりゃあ、様々なレベルでの思考を見事に切り替えもって並行して進め、それらあを瞬時に統合することができることやっちゅうがやき。
ほんで、その様々なレベルの思考たぁ、次の「七つのレベルの思考」やっちゅうがよ。
「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」
ほんで著者は、人生や仕事における「困難な問題」の解決に取り組む知性は、必ず、この「垂直統合」の思考を身につけちゅうっちゅうがやき。
さらに、組織や社会の「困難な変革」を実現する知性もまた、必ず、この「垂直統合」の思考を身につけちゅうっちゅうがよ。
そんなんこぢゃんと難しゅうて、不可能ながやないかと思うかもしれんけんど、実はそれほど難しいことやのうて、ただ一つのことを行うだっけで、この「七つのレベルの思考」が身につき始めるっちゅうがやき。
そりゃあ、「自己限定」を捨てることやっちゅうがよ。
ワシらあは、無意識に、自分の思考を、自分が得意やと思うちゅう「思考のレベル」に限定してしまう傾向があるっちゅうがやき。
例えば、「自分は技術屋やき、ビジョンとか、戦略とかは、よう分からんです」とか、「仕事は人間がすべてながよ。会社の方針はよう知らんけんど、人間関係がすべてながやき」とか、こうした言葉を語りたがる傾向ながよ。
もとよりこれらあは、真摯に語られた言葉やけんど、問題は、その背後にある「無意識」やっちゅうがやき。
ワシらあは、無意識に、自分の思考を、自分が得意やと思うちゅう「思考のレベル」に限定してしまうっちゅうがよ。
ほんで、その「自己限定」のために、自分の中に眠る「可能性」を開花させることができいで終わってしまうっちゅうがやき。
そっから著者は、『スーパージェネラリストに求められる「七つの知性」』として、� 峪彖曄廚離譽戰襪了弭諭↓◆屮咼献腑鵝廚離譽戰襪了弭諭↓�「志」のレベルの思考、�ぁ崟鑪�」のレベルの思考、�ァ崟鐔僉廚離譽戰襪了弭諭↓Α峙蚕僉廚離譽戰襪了弭諭↓А嵜祐嵶蓮廚離譽戰襪了弭諭△蕕△魑鵑欧董△修譴召譴鬚泙困牢蔽韻鵬鮴發靴舛紊Δ�よ。
ほいたら、読者の中から、『そういう「七つのレベルの思考」は、企業経営者やベンチャー起業家らあは、誰もが、多かれ少なかれ、持っちゅう思考ながやないか？』っちゅう疑問の声が挙がるかもしれんけんど、敢えて著者は、彼らはいずれも「中途半端」やっちゅうがやき。
第一に、「七つのレベルの思考」に粗密があり、アンバランス。
第二に、「七つのレベルの思考」のそれぞれが、深まってない。
第三に、「七つのレベルの思考」が、互いにシナジーを生み出してない。
ほんじゃき著者は、経営者や起業家やリーダーが、現実の問題を解決し、現実の状況を変革する「スーパージェネラリスト」へと脱皮していくためにゃあ、以下のことを行わんとイカンっちゅうがよ。
�� 七つのレベルの思考を、バランス良う身につけていく
�⊆靴弔離譽戰襪了弭佑髻△修譴召譴離譽戰襪膿爾瓩討い�
��七つのレベルの思考を、垂直統合して、シナジーを生み出していく
ほいたら、どうすりゃあ、この三つのことを実現できるがか？
そっから後は(ここまでで本書の約半分ばあやき、残りの半分ばあを使うて)、七つのレベルでの思考をそれぞれ取り上げ、その思考を深める方法と、上下の思考との間で垂直統合する方法について、かなり詳しゅうに語られちゅうがやき。
さらに終盤にゃあ、「多重人格のマネジメント」についてや、「知の変革」について、「二一世紀の知性」への深化についてらあが語られちゅうがよ。
その上、巻末にゃあ、「思想」、「ビジョン」、「戦略」と「戦術」、「技術」、「志」と「人間力」らあの「七つのレベルの思考」のそれぞれについてさらに詳しゅう学びたい方のために、著者がこれまでに著した書籍が、何冊も紹介されちゅうがやき。
田坂広志さんの「知性を磨く」・・・まっこと僅か230ページばあの新書本にも関わらず、ワシも目からウロコやったり、「ナルホド！そうか！」と膝を打ったりがテンコ盛りやって、経営者はモチロン、全てのビジネスパーソン必読の、良書中の良書やといえるがぜよ！
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