ブリュードッグは、2007年に300万円でスタートしたイギリスのクラフトビール会社ながやけんど、そっから僅か8年足らずで、売上70億円を超える急成長を遂げたっちゅうがよ。
しかも、熱狂的なファンを世界50ヶ国以上で獲得しちゅうっちゅうき、こりゃスゴイことながやき。
そんなブリュードッグの奇跡のマーケティングを、創業者であるジェームズ・ワットさんご本人が、こぢゃんとアツうに語られちゅうがが本書ながよ。
ちなみにこのブリュードッグは、ワシが昨年10月にロンドン出張に行った際、現地在住の日本人の方から、「今、大人気のクラフトビールや！」っちゅうて、お土産にいただいたががソレやったもんやき、余計に本書に愛着を持ったがやき。
飲んでみたら、アルコール度数が16％ばああって、こぢゃんと濃い、主張のハッキリした個性的な、確かにパンクっぽいビールやったがよ。
さらに、本書の解説を書かれちゅうがは、かの名著「ストーリーとしての競争戦略」の著者として有名な、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建さんやったがやき。
そんな楠木さんが、この書籍を読まれ、「これほどワシの喜びのツボを押しまくりやがってくる本は滅多にない」とか、「ワシにとっての本書の最大の美点、そりゃあワシが仕事の最強の原理やと信じちゅう『好きこそものの上手なれ』の内実を、リアルな事例で活き活きと描き出しちゅうところにある」とか、「本書のメッセージの核心部分にゃあ全面的に賛成する。自分の仕事と仕事生活を貫くコンセプトをメタファーで獲得する。経営者であろうとなかろうと、これこそが仕事の一丁目一番地に他ならん」とかっちゅうて、ベタ誉めながよ。
ちなみに、楠木さんの解説まで含みゃあ、全390ページっちゅう分厚い本ながやけんど、短い文章で歯切れよう、自分の言いたいことだっけをスカッと言い切る文体で、こぢゃんと読みやすいき、翻訳本にゃあ珍しゅう読み終えるまで特に苦痛やなかったがやき。
さて本書は、パンクをメタファーとしてブリュードッグのビジネスを語る、アツいアツいメッセージ性の高い内容ながよ。
まず1章は、「戦う自由人のための起業論」。
いきなり、「始めるがはビジネスやない。革命戦争や」っちゅう言葉に、グッとシビレるがやき。
ほんで著者は、こう語るがよ。
「ザッポスが始めたがは靴のネット販売やない。」
「社員を最高レベルで尊重し、それによって顧客サービスを高めるっちゅう革命の戦いを始めたがや。」
「ノーマが始めたがはレストランやない。」
「北欧料理を生まれ変わらせ、自ら掲げた『新しい北欧料理のマニフェスト』を実現するっちゅう使命に取りかかったがや。」
「アップルが始めたがはコンピューター・ビジネスやない。」
「彼らの使命は、テクノロジーを通じて世界を変えることや。」
ほんで、次の通り語るがやき。
「商品やサービスだっけを欲しがる消費者はもうおらん。21世紀の消費者はますます、自分の価値観に合い、それを支えてくれる使命と信念を持った企業や団体とつながりたがっちゅう。これからの顧客が望むがは、自発的におまさんの仲間になり、成功の一員になることながよ。おまさんの側は、顧客がそうした行動をとるばあの魅力的な理由を与える必要がある。力強い使命を掲げることで、人々に目を向けさいて、彼らを熱心なファンに変えることができる。会社が世の中に影響を及ぼせるようになるまで生き延びたけりゃあ、まずは心揺さぶるような革命の戦いをビジネスの核に据えることぜよ。」
つまり、著者のジェームズ・ワットさんが始めたがはビールの醸造所やない。
大量に工業生産されたビールか、古臭うて面白みのないビールしかなかった世界を変えるため、自分らあと同じばあ世の人々をうまいクラフトビールに夢中にさせるっちゅう革命戦争に踏み出したっちゅうことながやき。
そっから後も、とにかくパンクなセリフがガンガン登場するがよ。
「人の話は聞かれん。アドバイスは無視せえ。」
「事業計画らあ時間の無駄や。」
「営業のことらあ忘れろ。」
ソーシャルメディアが膨れ上がった現代は、最高の商品さえつくり、目を向ける価値のあることをしよりゃあ、見る目のある人らあが勝手に見つけ出し、広めてくれるっちゅうがやき。
客を引き寄せる魅力が必要ながであって、売り込みによって魅力が生まれることらあないっちゅうがよ。
さらに著者は、「売る」っちゅう概念が完全に変化したっちゅう事実に気づかにゃあイカンっちゅうがやき。
自分らあが会社としてどう行動し、機能し、考えを伝えるかは、自分らあが世の中にどう受け止められるか、そして、どれっぱあ商品が買われるかに直接関わってくるっちゅうがよ。
自分らあの行動すべてが販売活動であり、社員全員の行動が常に販売活動になる。そういうつもりで行動せにゃあならんっちゅうがやき。
ほんで、「営業マニュアルは破り捨てろう。これまでの売り方は、ゆっくり苦しみもって死んでいく。生き延びるがは情熱、こだわり、質や」っちゅうがぜよ。
さらに、「嫌われもんになれ」、「永遠に青二才でおれ」らあの、パンクな言葉が続くがよ。
2章は、「未来を見る反逆者のための財務論」。
著者は、会計はスポーツで言やあスコアブックみたいなもんで、得点を記録できんかったら、自分が優勢ながか、劣勢ながかも分からんっちゅうがやき。
ほんじゃき、財務の知識は必須やっちゅうがよ。
この章は普通やいかと思いよったら、「銀行をたらし込め」とか、「オルタナティブ資金調達」の「パンク株」(自社ウェブサイトで株を売るビジネスモデル。つまり独自のクラウドファンディング。)とか、やっぱしパンクやったがやき。
しかも「パンク株」立ち上げの際にゃあ、チャンスは1回きりやったき、1940年代の戦車を借りて、ブリュードッグの旗を掲げてイングランド銀行とロンドン証券取引所に乗り付けたっちゅうき、まっこと凄まじいパンク魂ながぜよ！
3章は、「迷える子羊のためのマーケティング論」。
著者は言うがよ。
「今の時代、会社はマーケティングがすべてや。自分や自分の会社のやることすべてがマーケティング活動になる。現代じゃあブランドは会社のもんやのうて、顧客のもんながやき。ほんで、顧客の行動がブランド形成に深う関わるようになったために、マーケティング活動は双方向の対話になった。巨大ブランドが古くさい掟や時代遅れの技術で業界や市場を独占し、支配する時代は終わったがよ。時代遅れの巨大ブランドが過去のやり方に必死にしがみついちゅう間に、未来をつくる動きに加わろう。マーケティングの新たな夜明けや。」
「ブランドたぁ、自分で操ることのできん、人の頭ん中にある感情的な反応のこと。つまり、認知の問題ながやき。」
「 ブランドたぁ、おまさんの会社や、おまさんのすることに対して世界が抱く感覚的な理解の集合体や。」
「21世紀においちゃあ、ぶれんこと、魅力的であること、オープンであること、誠実であること、統一感を示すことができてようやく、ブランド構築の第一歩を踏み出せる。」
「今の消費者は、既存のブランドを押しつけられるより、自分でブランドを見つけ出すことを好む。ほんじゃき、マーケティングの苦労も地道な努力も報われ、利益につながる。『すごい！』『なんやこれ！』『気に入った！』『かっこえい！』と思わせられりゃあ、そのブランドが定番になる。消費者は従来のマーケティングで売り込まれる量産品より、自分で発掘した希少品のほうに共感する。素晴らしいことに、消費者に発掘してもらうマーケティングのほうが安上がりで、しかも頼りになるがよ。」
「すべてがマーケティングやと言うたけんど、そりゃあつまり、どんなもんやち顧客とのつながりを深めるために利用できるっちゅう意味でもあるがやき。ほんで、自分の行動のすべてに使命とブランドイメージを焼きつけにゃあ、共感を呼び起こし、結びつきと勢いを生み出すこたぁできんがよ。」
たとえば、ブリュードッグのビアマットは、ビール好きの心に働きかけ、ブリュードッグの理念を伝えるためのマーケティングツールやっちゅうがやき。
ほいたらこのビアマットは、ソーシャルメディアで50万回以上もシェアされ、金をかけんと認知度がぐっと高まり、あちこちで人気になったっちゅうがよ。
さらに社内の経営会議でさえ、それをどう開くかでマーケティングにもなるっちゅうがやき。
2015年の計画会議じゃあ、北極圏のフィヨルドでシャチらあと素潜りして、新聞3紙に取り上げられたっちゅうがよ。
また、ブリュードッグが作ったオンラインコンテンツは、さらに過激ながやき。
●マイナス30度の冷凍庫に裸で入り、動画に撮ってブログに載せる。(氷点下でビールを凍らせてアルコール度数を高めた「戦略核ペンギン」っちゅうビールの宣伝。)
●車にはねられたリスの死骸をアルコール度数55％のビールのパッケージに使う。(「歴史の終わり」っちゅうビールの宣伝。リスの死骸を剥製にして、口からビールを注げるようにボトルをパッケージングした。この銘柄を「人類史上最も度数の高いビール」「ビールの終末(死)」と呼び、それにかけたもん。)
●ヘリでロンドン上空を飛びもってネコの剥製をパラシュートで地上に落とす。(「くだばれ金持ちども」と銘打った「パンク株�検廚寮訶繊�)
・・・等々で、かなり過激やけんど、重要な点は、これらあを実行中のコミュニケーションのとり方やっちゅうがよ。
公開するあらゆる情報を通じ、ブリュードッグの派手な行動が核となる使命と結びついちゅうことを強調したっちゅうがやき。
ほんで、著者は言うがよ。
派手なパフォーマンスが実際に効果を発揮するにゃあ、それが本質的な部分で使命と結びついちゅうことと、すでに揺るぎない支持と信頼できるブランドが確立できちゅうことが条件になるっちゅうがやき。
また、その世界戦略も見事ながよ。
まず、現地の卸売り業者にいきなり電話をかけろうと考える前に、自分らあの使命を輸出するっちゅうがやき。
具体的にいやあ、商品に情熱を持ってくれる現地のブロガーを見つけるっちゅうがよ。
狙いをつけた輸出先で鍵となるブロガーらあに最高のビールを無料サンプルとして送ったっちゅうがやき。
彼らがブリュードッグについての記事を書き、口コミで話題となり、それが市場の地ならしになったっちゅうがよ。
ほいたら、最高の卸売り業者から電話がきて、相手の方からビールを卸さいてほしいっちゅうて頼んできたっちゅうがやき。
さらに著者は語るがよ。
「顧客やのうて、ファンをつくれ」と。
ブランドと使命を中心にしてコミュニティーを築く。こちらの言うことを聞かせるがやのうて、相手の言うことに耳を傾けるために、コミュニティーを築く。そうすることで、多くの場所でファンが生まれたっちゅうがやき。
新しいバーの出店場所を探すがにも、新しい社員を雇うがにも、新しい取引パートナーを見つけるがにも、新しいビールのラベルデザインを決めるがにも、このコミュニティーの力を借りたっちゅうがよ。
また、ワシが一番唸ったがは、「まずは使命や。商品やない。」っちゅう項目やったがやき。
「人は価値があると感じ、共感できるもんを欲しがる。変化の一部となり、共に革命を起こしたいと思うちゅう。ほんで、そのチャンスをおまさんに求めちゅう。おまさんの使命について聞きたがっちゅうがよ。彼らはもう、商品の話らあ聞き飽きちゅう。会社やブランドはいつか必ず消えてのうなるけんど、革命を支えた精神は生き続けるがやき。」
「ブリュードッグが魚やとすりゃあ、ワシらあはまだ、生まれたてのヨーロッパ・クラフトビール市場っちゅう小さな池に合うた小さな体をしちゅう。ここで大事なこたぁ、魚の体を大きゅうするがやのうて、池を大きゅうするために力を入れることながよ。魚が自由に泳ぎ、秘めた力を発揮できるよう大きな池を与えるがぜよ。」
「商品やのうて、情報を売るつもりでおりや。まずは顧客への情報提供で競争相手を上回ることながやき。そうすりゃあ、自然と売上でも優位に立てるがよ。顧客の知識が深まるばあ、正しい判断をしてくれるようになるがやき。丁寧に情報を与え、あふれるばあ情熱を伝えりゃあ、顧客はおまさんの素晴らしい商品やサービスを進んで買い求めるようになるがよ。そうなりゃあ、その顧客はもう革命に加わったも同然ながやき。情報にゃあ人を引き寄せる力があり、知識にゃあ力があるがぜよ。」
さらに、ブリュードッグの使命は、世の人々が飲むビールに味と風味、職人の技を取り戻すこと。そして、さまざまな味わいやスタイルのあるビールの世界が存在するがやと彼らに気づかせることや。まずいビールが心の底から憎いからこそ、そういうビールを粉砕するため終わりなき戦いを続けゆうっちゅうがよ。
ほんで、次のような動画を作り、世界中で何百万回も再生されたっちゅうがやき。
●工業生産ビールのボトルをゴルフクラブで打って割る。
●味気ない安物ラガービールの缶をショットガンで吹っ飛ばす。
●量産ビールのボトルで野球をする。
●低俗ビールのボトルをピンにしてボウリングをする。
さらに、「恩赦」と題して工業生産ビールをクラフトビールと交換するキャンペーンまでやったっちゅうき、筋金入りながよ。
また、一番衝撃的やったがが、4章の「新時代の破滅的パンクのためのセールス論」やったがやき。
何とこの章は、わずか見開き2ページで終了しちゅうがよ。
販売活動についちゃあ、3つだけシンプルなルールを知っちょきゃあえいっちゅうがやき。
�‐ι覆暴乎罎垢襦�
��隠さんと、誠実に。
�２然紛チ茲呂擦鵝�
以上ながよ。
著者は、販売であれこれ悩むこたぁない。ほかのことでえい仕事をすりゃあ、勝手についてくるっちゅうがやき。
さらに、まだまだこの後は、5章「野望に燃える海賊船長のためのチームビルディング」っちゅう、パンク組織論があり、6章「ひたむきな自由人のための時空論」っちゅう、空間や時間を操りもって目標にたどり着くためのアイデア、哲学、思考回路、ルールの章があり、7章「パンク起業家の頭の中」っちゅう21世紀型起業家にとって一番重要な哲学や思考回路、野心、ルールの章があるがよ。
ほんで、締めくくりがこれまたパンクの面目躍如ながやき。
「本書でワシゃあ、人のアドバイスは聞くなと言うた。そりゃあ、ここに書いたことすべてに無条件で当てはまる。ほんじゃき、おまさんがもし本当に賢明な人やったら、本書全体を無視するべきやろう。参考にするも、せんも、好きにしてもろうてえい。ただし、何か行動は起こしてほしい。それから、とにかく楽しむことを絶対に忘れちゃあイカンぜよ。」
さらにラストページは、ブリュードッグの商品画像と共に、再びこの言葉が、大きゅう掲載されちゅうがよ。
「ビジネスを始めるがやない。革命ぜよ。」
「ビジネス・フォー・パンクス」・・・まさに型破りでパンクな、けんどこぢゃんと魂にビシビシ刺さる言葉だらけでまっこと学びになる、稀有なビジネス書ながぜよ。
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