「惨めな目に遭うた時の心得。
一つ。品物に八つ当たりせんこと。
一つ。頬に笑顔を絶やさんこと。
一つ。無理をしゆうと他人にさとられんようにすること。」(向田邦子「冬の運動会」より)
テレビドラマ脚本家、エッセイスト、第83回直木賞受賞の小説家、向田邦子さん(1929〜1981)作のテレビドラマ「冬の運動会」からの言の葉ながよ。
自分が惨めな目に遭うた時、どうしゆうかをちくと思い出してみろうや。
多分、周りにある品物に八つ当たりしゆうし、眉間にシワが寄って目はつり上がっちゅうし、他人にさとられんようにしょうとしたち、一目で無理しゆうことがバレバレながやないろうか。
結局、そりゃあ自分の中に生じた不愉快を、周囲に撒き散らす行為やっちゅうことで、不愉快を拡大再生産しゆうだけやっちゅうことながやき。
たとえ不愉快を周囲に撒き散らしたち、自分の中の不愉快は減じるどころか、むしろ維持される、もしくはさらに増えるだっけやし、さらに周りにも伝染していくことにつながるだっけながよ。
ほんじゃき、この惨めな目に遭うた時の三つの心得は、まっこと至言やと思うがやき。
けんど・・・現実にゃあ、そんな時にこの三つが実践できるかっちゅうたら、これがまっこと難しいがよ。
ほいたら、一つ目の「品物に八つ当たりせんこと。」だっけでも心に刻みつけちょいて、実践してみろうや。
今度惨めな目に遭うた時は、一挙手一投足に気を配り、あえて普段よりか丁寧に慎重に、周囲の品物に心配りをすることだっけに集中してみるっちゅうことながやき。
この一点のみに集中することさえできりゃあ、自然と惨めな目に遭うたことから思考が離れ、結果として表情も和み、他人からも無理しゆうようにゃあ見えんなるはずながよ。
これさえできりゃあ結局は、より早うに不愉快な思いは消え去っていくもんながぜよ。