2017年07月07日

「デザインの次に来るもの」―中小企業の生きる道はコレぜよ!

 今回は、久々のお薦め書籍、「デザインの次に来るもの」〜これからの商品は「意味」を考える〜(安西洋之 八重樫文 著 発行:クロスメディア・パブリッシング 発売:インプレス 2017年5月1日発行 本体:1680円)をご紹介さいていただきますぜよ。
(1)デザインの次に来るもの(2)デザインの次に来るもの・裏表紙

 まず、ワシが何でこの書籍を購入したかっちゅうたら、たまたま書店で見つけ、サブタイトルの『これからの商品は「意味」を考える』と、オビの『9割の会社は「技術」より「意味」を突き詰めろ! ロウソクは、なぜ今も売れ続けるのか?』『欧州が一歩先をゆく経営戦略「意味のイノベーション」の全貌』っちゅう言葉らあに、ビビッと反応したきながよ。


 全体の内容やけんど、イタリアデザインの歴史やとか、世界のデザインの潮流やとか、デザイン関係者やない一般のビジネスパーソンにとっちゃあ、あんまり興味をソソらん部分もあるこたぁあるけんど、こりゃあまっこと現代の全てのビジネスパーソンにとって、特に中小企業にとって、新たな道を見出だすカギとなる、必携のビジネス書やと感じたがやき。


 著者も「はじめに」で、「製品の質に差がのうなり、差別化できん。モノが売れん。そうした八方ふさがりに見える状況のなかで、新しい道を探していらっしゃるビジネスパーソンに読んでいただきとうて、この本を書いた。」っちゅうて語られちゅうがよ。


 さて、1990年代以前、デザインはモノの色やカタチを指すことが主流やった、つまりモノの外観っちゅう限定的な領域を指しちょったっちゅうがやき。


 その後、デザインはモノ以外も対象にするようになり、問題解決の手段として、あるいは社会全体を対象にしたデザインも視野に入れるようになり、企業のなかでもクリエイティブな分野だけやのうて、経営のデザインが必要やと言われるようになったっちゅうがよ。


 ほんで著者は、こりゃあ「イノベーションにデザインは有効である」との考え方が普及してきた証やっちゅうがやき。


 さらにその重要なケースが欧州にあるっちゅうて、2010年、EUが10年計画の6つの重要なプロジェクトの1つにイノベーションの推進を掲げ、その実行にあたっちゃあ、デザインの考え方を官民ともに定着させることで、あらゆる分野とレベルでイノベーションを実行するがに適切な土壌をつくり始めたことを挙げるがよ。


 ほんで、この政策の1つに、地方の「技術を売りにしない中小企業」のイノベーションを推進することを念頭に置いたプログラムがあり、このプログラムに採用されちゅうアプローチが「意味のイノベーション」で、本書はここに注目するっちゅうがやき。


 こりゃあ、極端な言い方をすりゃあ、製品の仕様やパッケージをまったく変えることのうイノベーションを起こす方法であり、ソーシャルメディアらあが力を持ってきた時代に多くの企業が挑戦できるテーマやっちゅうがよ。


 ちなみに「意味のイノベーション」っちゅうんは、イタリア・ミラノ工科大学の経営工学研究所のロベルト・ベルガンティ教授が著した「デザイン・ドリブン・イノベーション」に登場する言葉やっちゅうがやき。


 ほいたら、「意味のイノベーション」たぁ、何か?


 一般的に「イノベーション」は、「技術革新」と訳されるけんど、そりゃあテクノロジー開発の背中を押す、「技術のイノベーション」のことで、「どうやって?」を求めるがよ。


 これに対し「意味のイノベーション」は、市場に“新しい意味”をもたらす土壌をつくるっちゅうことで、こちらは「なぜ?」を追及するがやき。


 たとえば、電灯がこれっぱあ普及しちゅうに、ロウソクはなんで今も売れ続けるかっちゅうたら、もちろん停電になったときの緊急用としちゃあ必要やろうけんど、「食事のムードを楽しみたい」っちゅう“新しい意味”に気づいた人がおったき、売れ続けゆうっちゅうことながよ。


 このように、「技術のイノベーション」やのうて、「意味を突き詰めて、新しい意味を生み出す」っちゅう「意味のイノベーション」に力を入れるがが、「デザイン・ドリブン・イノベーション」やっちゅうがやき。


 投資のかかる技術開発競争に巻き込まれるテクノロジー依存よりか、中小企業はこちらのイノベーションに注力すべきやっちゅうがよ。


 また、「技術のイノベーション」は、「製品・サービス・プロセス」の変化である「どうやって?」が中心になるけんど、「意味のイノベーション」は、「使い方・シンボル・ユーザーの感情」の変化である、「なぜ?」を起こしていく、「なぜ?」を追及するもんやっちゅうがやき。


 さらに、意味はメタファー(暗喩)によって伝わりやすいっちゅうがよ。


 人はモノそのものよりか、モノとそれが関わるサービスの意味を買うがやき。


 けんど、意味は同じモノやコトでも人々の生活様式や文脈によって変わってくるがよ。


 たとえば、100年前の「走る」と現代の「ジョギング」は、まったく意味が違うがやき。


 また、寿司もそうやっちゅうがよ。


 かつては、欧米一般じゃあ、生魚を食べるらあて「信じられん」っちゅうゲテモノやったがが、ダイエット食、ヘルシー食っちゅう意味になり、いまや世界中で一般的に食べられるようになったがやき。


 次に、「意味の転換を人々にどう伝えるか」が問題になるっちゅうて、スイスの時計メーカー、スウォッチの例を挙げるがよ。


 1970年代半ばまで、スイスは機械式の時計大国やったがやけんど、その後クオーツとデジタル表示が登場し、日本をはじめとするアジア系メーカーの低価格帯商品に押され始め、10年後にゃあ3分の2のスイスの時計メーカーは廃業せざるを得んなったっちゅうがやき。


 この危機に直面して、スイスの2社が合弁して設立したががスウォッチで、高価な機械式やのうて、クオーツで真っ向からアジアメーカーに対抗するためやったっちゅうがよ。


 同社は、それまで一生モノやった時計の意味を変え、ファッションに合わせる多数の時計を提供することにし、そこでメタファーが活用されたっちゅうがやき。


 「ネクタイは100本持っていても新しいネクタイを買う。時計も同じ。」


 「時刻を示す機器からファッションアイテムへ」っちゅう意味の転換ながよ。


 このネクタイのたとえにより、毎年新しいデザインの時計を買うことに抵抗がないなったっちゅうがやき。


 スウォッチは、ネクタイとおんなじ季節ものの商品ながやき、いくつ持ったちえいっちゅうことながよ。


 またメタファーは、顧客の購買動機をつくり出すだけやのうて、企業内の開発段階でコンセプトを社内に広めたり、製品やサービスのコンセプトを取引関係者に伝えるがにも役立つっちゅうがやき。


 ユニークなコンセプトを、幅広い協力者らあに短い時間で直感的に共有してもらいたいときらあに、メタファーが活躍するっちゅうがよ。


 ほんで著者は、スウォッチの例は、「どんな規模の企業であろうと、新しい意味をつくることができる」との確証を持つにふさわしい例やっちゅうがやき。


 さらにこの他にも、こぢゃんと参考になる事例が目白押しながよ。


 たとえば、アメリカのGEヘルスケアにおける、MRI装置のデザインの事例。


 2年半かけて自信を持って開発したMRIの装置を使う際、子供の患者やと怯えてしもうて、その80%に鎮静剤の投与が必要やったっちゅうがやき。


 その驚きの改善策は、「体験」を設計し直すことやったっちゅうがよ。


 つまり、子供がMRIをどう体験し、利用するかを総合的に考え、装置一式を冒険物語にすることを考えたっちゅうがやき。


 装置の内部の技術にゃあ一切手を加えんと、機器の外側と床や天井、部屋のあらゆる面にカラフルなイラストを施し、冒険を演出するっちゅうがよ。


 さらに、子供を冒険に誘うための、操作担当者向けの台本も考えたっちゅうがやき。


 「これから海賊船に乗って旅をするき、じっとしちょかにゃあイカンぜよ」っちゅうようなもんながよ。


 ほんで、競合他社はいまだにMRIのスキャンの速度や解像度の向上らあの技術的な仕様ばっかしに目を向け、そこで熾烈な競争をしゆうっちゅうがやき。


 新しい意味を見出だすにゃあ、様々な分野の専門家らあで構成される、解釈者のネットワーク(=デザイン・ディスコース)が大事やっちゅうがやけんど、そこにおいて探究されるがは、モノの「物質的な質」や「機能」やのうて、人々がモノに与える「意味」やっちゅうがよ。


 加えて「人々は、実利的な理由だけやのうて、深い感情的な理由や、心理的・社会文化的な理由からモノを買う。つまり、人々は製品を買うがやのうて、その意味を買いゆう」っちゅうがやき。


 ほんで、モノの意味を劇的に変える方法論が、デザイン・ドリブン・イノベーションやっちゅうがよ。


 さらに、そんなデザイン・ドリブン・イノベーションを実践しゆう企業の実例として、北イタリアの日用雑貨・家庭用品メーカーのアレッシィと、同じゅう北イタリアの照明器具メーカーのアルテミデが紹介されちゅうがやき。


 ここじゃあ長うなるき、アレッシィの事例のみを紹介すりゃあ、ワインのコルク抜きながやけんど、回転する頭に腕みたいなレバーがついちゅう、まるで玩具の人形みたいな「アンナG」の事例ながよ。


 ワインの栓にクルクル頭をねじ込みゃあ、両腕がドンドン上がっていき、上がり切ったところで一気に腕を下げりゃあ、ワインのコルクが抜けるっちゅう仕組みながやき。


 その様子は、アンナGが楽しゅう優雅に踊りゆうようで、1994年の発売以降、「1つは自分のために買うて、もう1つは友人のために買う」っちゅうて言われるばあ、いまなお世界で売れ続けゆうっちゅうがよ。


 ほんで、アレッシィがこのアンナGの開発にあたって取った戦略は、ユーザーが感じちゅう既存の問題の解決やのうて、新たな意味をユーザーに提案するような戦略やったっちゅうがやき。
(3)アンナG

 もしアレッシィが、ユーザーの家庭に赴いて、彼らがどんなふうにワインのコルク栓を抜くかをツブサに観察したりしよったら、このような愛らしいもんやのうて、まっと効率的で便利な道具が考案されちょったやろうっちゅうがよ。


 けんど、アレッシィが目指しちょったがは、ユーザーがすでに頭ん中に思い描いちゅう「いま欲しいもん」やのうて、人々がそれを目にしたときにはじめて、「そうや!これを待ちよったがや!」と感じられるようなもんやったっちゅうがやき。


 そのためにアレッシィは、ユーザーと一歩距離を置き、社会、経済、文化、芸術、科学および技術の進化を研究し、小児科医と精神分析医が行うた研究に注目したっちゅうがよ。


 そりゃあ、子供が毎日手にするもんが、どのように日常的な感情に結びついちゅうか、ちゅうもんやったっちゅうがやき。


 特に彼らは、子供らあが母親から自立する際に重要な持ち物に注目したっちゅうがよ。


 そりゃあ、ぬいぐるみや安心毛布のようなもんで、このような持ち物にゃあ、誰もが特別な愛着がある、つまり誰もが日常生活で特別な意味を見出だすことに気づいたっちゅうがやき。


 著者は、こりゃあ単なるアレッシィの思いつきやないっちゅうがよ。


 このような着想に至る過程に、企業やったら誰やち利用できる考え方があることを理解することが重要やっちゅうがやき。


 ユーザーと一歩距離を置くっちゅうことは、「問いの立て方を変える」っちゅうことであり、「人がどのようにワインの栓を抜きゆうか」を注意深う観察するように、対象に最接近するがやのうて、まっと引いて社会や人々の生活全体を見ることが必要になるっちゅうがよ。


 つまり、ここでの問いはこう変わるっちゅうがやき。


 「おまさんの家族が、家で夕食をとるとき、そこにどんな意味を求めちょりますか?」


 問いがこのように変わったとき、台所用品メーカー、家電メーカー、テレビ局、インテリア・デザイナー、食品ジャーナリスト、食品小売店っちゅう他の企業も、これと同じ調査をしゆうことに気づくやろうっちゅうがよ。


 いろんな人らあが「自宅で家族とともに夕食を取る」っちゅう同一の生活背景を見て、それぞれの立場から解釈しゆうことになるっちゅうがやき。


 言い換えりゃあ、彼らは人々の生活の「解釈者」といえるっちゅうがよ。


 デザイン・ドリブン・イノベーションを実践する企業は、こうした解釈者らあとの相互作用を重要視しちゅうっちゅうがやき。


 ほんで、これがデザイン・ディスコースやっちゅうがよ。


 彼らは互いにここで、自分らあの考えについて情報交換を行うて、自分らあの仮説がどれっぱあしっかりしちゅうかを試し、自分らあの持つビジョンについて継続的に議論し、ほんで企業はこっから人々が生活に与える「意味」を見出だすっちゅうがやき。


 アレッシィはここで、家族の夕食における意味を見出だし、それをワインの栓抜きに与えたっちゅうがよ。


 ベルガンティは、デザインを「モノに意味を与えること」と定義しちゅうっちゅうがやき。


 さらに著者は、デザイン・ディスコースが独特でありゃああるばあ、他者が真似できん知見があふれていき、そりゃあ企業の長期的な資産となり得るっちゅうがよ。


 アレッシィがいまなお魅力的な製品を発表し続けゆうがも、独特なデザイン・ディスコースを維持・発展させゆうおかげやっちゅうがやき。


 さらに著者は、ありがたいことに、「意味のイノベーション」を導く4つのプロセスを、詳しゅうに紹介してくれちゅうがよ。


 簡単に紹介すりゃあ、以下の通りながやき。


<ステップ1>「個人による熟考」


一人ひとりが自分の持つモノゴトの前提に疑問を投げかけて、自社が解決できる顧客の問題を新たな解釈で捉え直すっちゅうことながよ。


「自分自身の考えを起点にすること」が重要なポイントやっちゅうがやき。


<ステップ2>「ペアによる建設的な批判」


 信頼できる仲間の建設的な批判にさらされることで、自分のビジョンやアイデアはより強いもんになるっちゅうがよ。


<ステップ3>「小さなサークルによる厳しい批判」


10人未満ばあのグループで、議論をさらに厳しい批判にさらすっちゅうがやき。


この批判も否定的なもんやのうて、比較検討することを重視し、より優れた価値提案が見つかる可能性はないか検討していくっちゅうがよ。


ここでのポイントは、みんなあの「共通の敵」をつくることで、好きなもんよりか嫌いなもんを話し合うたほうが意見はまとまり、仲間が団結し、強力な一体感が生まれるっちゅうがやき。


<ステップ4>「解釈者による批判」


ここでまとめられたビジョンは最後に、新鮮な視点を持つ広範な領域の専門家の批判にさらされるっちゅうがよ。


この専門家が解釈者で、こりゃあ新たなアイデアの創出が目的で解釈者を関与させるがやのうて、的確な疑問の声を得て、新たなモノの意味を確固たるもんにするために、厳しい意見をもらうことが目的やっちゅうがやき。


以上、ブログとしちゃあ長うなったけんど、簡単に本書の内容を紹介さいてもうたがよ。


これだけやち、自社でも「意味のイノベーション」が起こせそうな、そんな気になってくるがやないろうか?


「デザインの次に来るもの」〜これからの商品は「意味」を考える〜・・・ほんじゃき、あらゆるビジネスパーソンに必携の書籍やっちゅうことながぜよ!

















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Posted by tsukasabotan at 14:14│Comments(0)