今回もお薦め書籍で、発酵デザイナーとして人気の小倉ヒラクさんの著書、「発酵文化人類学」〜微生物から見た社会のカタチ〜(小倉ヒラク 著 木楽舎 2017年5月1日発行 1600円+税)をご紹介さいていただきますぜよ。
まずこの書籍は、2017年5月に初版が発行されちょって、ワシゃあ昨年末に2019年5月発行の第6刷を購入し、いつか読もうと思うてそのまんまになっちょったがやき。
実は購入当初、パラパラっとは読んでみたがやけんど、ちくと小難しそうなと思うて、ほったらかしにしてしもうちょったがよ。
それをこの機会に読んでみろうと思い立ち、読み始めてみりゃあ、確かに「発酵学」と「文化人類学」のマッチングやき、小難しい部分は多々あるがやけんど、これがまっこと面白いこと面白いこと!
380ページ以上ある結構厚い本やに、ワシゃあ一気にハマって読み耽り、2日間で読了しちょったがやき。
さて、まず著者の小倉さんは、発酵デザイナーを名乗っちゅうがやけんど、目に見えん微生物の世界のナビゲーターであり、ワシらあの暮らしを支えてくれゆう発酵菌らあのエヴァンジェリスト(伝道師)として、日本はもちろん世界中を巡りもって、世界中で育まれた不思議な発酵文化を伝える仕事をしゆうっちゅうがよ。
次に、発酵文化人類学たぁ何かっちゅうたら、以下の通りやっちゅうがやき。
お酒が発酵するっちゅう現象は化学式に変換できる生命工学であり、なんで人それぞれ好きなお酒が違うがかっちゅうんは化学式に変換できん社会学やき、発酵の道っちゅうんは「生命工学と社会学の交差点」やっちゅうがよ。
一方、文化人類学もおんなじような構造になっちょって、様々なオブジェや民話らあをデータとして分解して共通項を再構築して体系化するっちゅうんは情報工学であり、けんどどういて人類がこんなに多様な文化を生み出したがかを考えるにゃあ、データを超えた仮説を生み出す想像力がいる社会学やっちゅうがやき。
具体的なモノからスタートし、抽象的なメソッドとして体系化する。そん時、歴史の奥に隠された「世界のひみつ」の扉が開く。その扉を開けるにゃあクリエイティブな感性と広い視野でものを見る思考力が試される。
つまり発酵文化人類学の定義は、「発酵を通して、人類の暮らしにまつわる文化や技術の謎を紐解く学問」やっちゅうがよ。
ほいたら著者は、なんでそうなれたがかっちゅうたら、次の通りながやき。
著者が、デザイナーとしてバリバリ仕事をやりすぎて、体調を崩してボロボロになっちょった頃、老舗味噌屋の末娘と彼女の大学の恩師である発酵学者・小泉武夫先生の研究室を、訪ねたことがあるっちゅうがよ。
ほいたら著者の顔を見るなり小泉先生は、「お前ッ・・・さては免疫不全やな。味噌汁飲め!納豆と漬物食え!」っちゅうて猛烈プッシュされたっちゅうがやき。
その通り実行してみりゃあ、体調は見事に回復し、「発酵ち、面白い」と興味を持って小泉先生の著書らあを読みよったら、味噌屋の末娘からデザインの仕事を頼まれ、彼女の実家の山梨の味噌蔵を訪ねたっちゅうがよ。
ほいたら、大きな木樽がたくさん並ぶ味噌蔵の中で、微生物が自分を呼ぶ声が聞こえたような気がしたっちゅうがやき。
その微生物の声に導かれるように味噌のデザインの仕事を始めたら大ヒットし、そっから酒蔵や醤油蔵やビールメーカーらあからもデザインの仕事を頼まれるようになり、ついに2014年にゃあ覚悟を決めて「発酵デザイナー」を名乗り、これからは発酵と微生物に関わる仕事しかせんと宣言し、30歳を過ぎて東京農業大学醸造科の研究生になり、世界で唯一の「デザイナー兼微生物研究家」っちゅう不思議な肩書が生まれたっちゅうがよ。
ほいたら内容やけんど、まず「パート1」は「ホモ・ファーメンタム〜発酵する、ゆえに我あり〜」っちゅうタイトルながやき。
このパートのテーマは「ヒトと発酵の出会い」で、微生物の働きが自分らあの世界を豊かにすることに気づいた時、ホモ・ファーメンタム(発酵するヒト)が生まれたっちゅう内容ながよ。
また、日本の創世記にも「神さまのカビ=麹菌」が大事な役割を果たしちゅうとして、このあたりもディープに詳しゅう掘り下げて書かれちょって、まっこと面白いがやき。
次に「パート2」は、「風土と菌のブリコラージュ〜手前みそとDIYムーブメント〜」っちゅうタイトルながよ。
このパートのテーマは、文化人類学者レヴィ=ストロースの有名な概念「ブリコラージュ」を下敷きに、発酵食品を手づくりする楽しさと味噌の奥深さに迫ったっちゅう内容ながやき。
ブリコラージュ(器用仕事)たぁ、一般的にゃあDIYのことで、素人があれこれ工夫してモノを組み立てるっちゅうニュアンスながよ。
レヴィ=ストロースは、世界中の神話を集めゆううちに「なんで世界各地でこれっぱあ多様で摩訶不思議なストーリーが生み出されるがやろう?」っちゅう疑問を持ち、「神話は一種の知的なブリコラージュぜよ」っちゅうて定義したっちゅうがやき。
いわく、「神話的思考の本性は、雑多な要素からなり、かつたくさんあるっちゅうたち、やっぱし限度のある材料を用いて自分の考えを表現することぜよ。」
ありあわせの材料を用いてブリコラージュを行う「器用人」は、明快なコンセプトに基づいて事前に用意された材料で無駄のう物をつくる「エンジニア」と対置されるがやけんど、「器用人」の仕事ぶりについて、レヴィ=ストロースはこんな風に述べちゅうっちゅうがよ。
「いままでに集めて持っちゅう道具と材料の全体をふりかえってみて、何があるかをすべて調べ上げ、もしくは調べ直さにゃあならん。その次にゃあ、とりわけ大切なことやけんど、道具材料と一種の対話を交わし、いま与えられちゅう問題に対してこれらの資材が出しうる可能な解答をすべて並べ出してみる。」
こりゃあまるっきり発酵のことを指しちゅうっちゅうがやき。
「神話」を「発酵文化」に、「器用人」を「醸造家」に入れ替えりゃあブリコラージュの概念はまさに発酵を象徴するもんやと言えるっちゅうて、著者は喝破するがよ。
さらに著者は、そんな発酵ブリコラージュのシンボルが、「手前みそ」やっちゅうがやき。
著者はもう何年も前から、山梨の老舗味噌屋さんとともに、味噌を手づくりする「手前みそワークショップ」を開催しゆうけんど、近年はそれが大人気となっちょって、こりゃあ新たなムーブメントの始まりやっちゅうがよ。
続いて「パート3」は、「制限から生まれる多様性〜マイナスをプラスに醸すデザイン術〜」っちゅうタイトルながやき。
このパートのテーマは「発酵文化の多様性」で、著者が日本の各地で出会うた個性的な発酵食品を解説しもって、土地に伝承されてきた郷土食文化の奥深さを紐解くっちゅう内容ながよ。
現代の科学の目で見りゃあ、奇想天外に見える発酵食品も、実は合理的にデザインされちゅうことがわかるっちゅうがやき。
ほんで、木曽の無塩乳酸発酵の漬物「すんき」や、新島のハードコア発酵干物「くさや」らあとともに、高知県嶺北地方の世にも酸っぱ爽やかな発酵茶「碁石茶」も、詳しゅう面白うに紹介されちゅうがよ。
お次の「パート4」は、「ヒトと菌の贈与経済〜巡り続けるコミュニケーションの環〜」っちゅうタイトルながやき。
このパートのテーマは「生態系を巡る贈与の環」で、文化人類学の主要テーマである「交換儀礼」と、微生物学の主要テーマである「エネルギーの代謝」を重ね合わせもって、生態系の中でどのように物質やエネルギーが循環しゆうがかを見ていくっちゅう内容で、この本の中で一番難しいパートやっちゅうがよ。
確かにかなりディープで難しい内容がてんこ盛りながやけんど、ワシゃあこのパートが一番目からウロコやって、メッチャメチャ面白かったがやき。
けんど、このパートを解説しよったら、メチャクチャ長うなってしまうき、ここじゃあ残念ながら解説はせんけんど、興味がある方は是非本書のご一読をお薦めしますぜよ。
続いての「パート5」は、「醸造芸術論〜美と感性のコスモロジー〜」っちゅうタイトルながよ。
このパートのテーマは「酒とヒトの感性」で、甲州ワインと日本酒の製法と歴史を系譜的に見つつ、人間にとって美たぁ何かをしつこうに掘り下げていくっちゅう内容で、醸造技術の詳細解説と文化論が入り交じる、本書で一番の読みどころやっちゅうがやき。
「日本酒におけるデザインの変遷」のくの「淡麗辛口の美学の誕生」の一部らあに、ワシからしたらちくと「ん??」っちゅうところもあるがやけんど、全体としちゃあ確かにメチャクチャ面白いき、一番の読みどころながよ。
お次の「パート6」は、「発酵的ワークスタイル〜醸造家たちの喜怒哀楽〜」っちゅうタイトルながやき。
このパートのテーマは「醸造家の働きかた」で、日本酒・味噌・醤油・ワインのものづくりに関わる4人の醸造家を紹介しもって、仕事の哲学や、組織やビジネスのモデルづくりの方法論を取り出していくっちゅう内容ながよ。
秋田の「新政」の古関杜氏さんの日本酒づくり、山梨の「五味醤油」の五味さんの味噌づくり、福岡の「ミツル醤油」の城さんの醤油づくり、山梨の「マルサン葡萄酒」の若尾さんのワインづくりらあについて、かなり突っ込んで紹介されちょって、このパートもまっこと面白いがやき。
最後の「パート7」は、「よみがえるヤマタノオロチ〜発酵の未来は、ヒトの未来〜」っちゅうタイトルながよ。
このパートのテーマは「バイオテクノロジーとヒトの未来」で、最先端のバイオテクノロジーと伝統的な発酵技術を比較しもって、これからワシらあがどのように生命と向き合うていくべきながかを考えていくっちゅう内容で、ヒトはヤマタノオロチの剣を使いこなせるがやろうかっちゅうことながやき。
発酵デザイナー小倉ヒラクさんの「発酵文化人類学」〜微生物から見た社会のカタチ〜・・・発酵をめぐる暮らし・文化・社会・テクノロジーらあを、面白うに楽しゅうに、かつディープに知ることができる、まっこと超お薦めの一冊ながぜよ。
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