2020年09月09日

人気の科学講義を書籍化!「お皿の上の生物学」ぜよ!

今回のお薦め書籍は、大阪大学理学部名誉教授の小倉明彦先生(理学博士・専門は神経生物学)の著書、「お皿の上の生物学」(小倉明彦 著 角川ソフィア文庫 令和2年4月25日発行 880円+税)ながやき。
写真1 お皿の上の生物学2020.9.9写真2 裏表紙

















この書籍は、オビのキャッチコピーに、「食の文化を、科学と歴史からひも解く」「新入生の五月病を撃退した人気の科学講義が始まる」っちゅうて書いちゃあるとおり、身近な食材や料理をもとに、生物学・解剖学らあの話題から、知られざる食の文化や歴史まで解き明かしちょって、新入生の五月病を撃退したっちゅうばあ面白いっちゅう、人気の科学講義を書籍化したもんながよ。


著者は「単行本あとがき」(文庫本にも再録)にて、本書のタイトル「お皿の上の生物学」にゃあ、二つの意味がこめられちゅうっちゅうがやき。


一つは、「お皿の上の料理についての生物学」で、もう一つは、「生物学自体を料理してお皿の上に載せる」っちゅう試みやっちゅうがよ。


この意味についちゃあ、以下のとおりの説明があるがやき。


大阪大学にゃあ「基礎セミナー」っちゅう新入生向けの科目があって、そりゃあ、受験勉強の目標を達成したあと、目標を再設定できんまんまでおる(いわゆる「五月病」に感染しつつある)学生に、学びの面白さを伝え、高校生までの受動的な「被教育」から能動的な「自己教育」に転換させることを目的とした、リモチベーション(再動機づけ)のための科目やっちゅうがよ。


テーマは、各教員の専門分野でもえいし、余技でもえいし、要は内容よりか学びの愉しさを教えなさいっちゅう科目やっちゅうがやき。


その科目で著者は、2001年から2005年まで「料理生物学入門」っちゅうセミナーを開いたっちゅうがよ。


そのコンセプトが、この「お皿の上の生物学」やったっちゅうがやき。


まず第一に「お皿の上の料理について、生物学をする」・・・実験(つまり調理)をしもって、いま鍋の中、フライパンの上で起きゆう出来事を解説するっちゅうがよ。


生物学っちゅうより、雑学・エピソード・トリビアやけんど、結構好評をえたっちゅうがやき。


そりゃあ、つい先日まで、試験勉強の対象でしかなかった「科学」が、いま自分の周囲の至るところに転がっちゅうっちゅうことを、あらためて実感できたきやろうっちゅうがよ。


次に第二に、「生物学を料理する」・・・著者は正課の生物学の講義も担当しちょって、そこじゃあ純正統的に、生体分子の構造から説き起こし、それらあの相互作用・化学反応を解説し、細胞の機能から組織・器官の機能に発展さいて、個体の営みに編み上げるっちゅう体系的な議論を展開するがやけんど、どうも議論が上滑りしてしまう、学生が再び教科書の中の世界に引っ込んでしまうっちゅう歯がゆさを毎年感じよったっちゅうがやき。


そこで、そういう「学問体系」を崩してみたらどうやろか、まず自分の近傍から説き起こし、逆に分子のほうへ広げていくっちゅう、そういう実験授業的なやり方を、「生物学を料理する」っちゅうて表現しちゅうがよ。


その二つの試みは、結局成功したかどうかはわからんっちゅうて著者は書いちゅうけんど、本書を読みゃあ、そりゃあ成功しちゅうはずやと、ハッキリわかるがやき。


何でわかるかっちゅうたら、完全文系人間のワシでさえ、本書を読んでメチャクチャ面白かったし、生物学も愉しそうやと思えたきながよ。


確かに、難しい表やら図やら、数式やら分子構造やらが、結構頻繁に登場しちょって、その詳しい内容らあについちゃあチンプンカンプンなところもあるけんど、ザックリたぁ理解できたし、何より通常ワシがこの手の本を読んだときに起こる拒絶反応が起こらんかったがやき。


ほんじゃき、文系人間の方にやち、自信を持って、お薦めさいていただきますぜよ!


さて、前置きが長うなってしもうたけんど、内容についちゃあ、ワシがこぢゃんと面白いと感じた部分の一部を、以下にピックアップさいていただきましょうかのう。


まずは、「第1講 味の話」じゃあ、光にゃあ三原色があるけんど、音にゃあ何原音っちゅうんはない、ほいたら味にゃああるかっちゅうたら、あるっちゅうがよ。


かつてそりゃあ、甘い、酸っぱい、塩辛い、苦いの四原味とされちょったけんど、日本人の池田菊苗っちゅう人が五つめの「旨み」を発見・提唱したっちゅうがやき。


その歴史らあについても詳しゅう紹介されちょって、歴史好きのワシにゃあまっこと面白かったがよ。


「第2講 色の話」にゃあ、焼きそばのキャベツに紫キャベツを使うたユニークな実験が紹介されちょって、まっことマジでやってみとうなったがやき。


まず紫キャベツを刻み、フライパンに少量の水を入れてチョコッと煮りゃあ、色素が抽出されて煮汁が紫色になるっちゅうがよ。


そこに焼きそばを投入すりゃあ、あーら不思議、黄色い麺が緑色になるっちゅうがやき。


こりゃあ、中華麺にゃあ鹹水が含まれちょってアルカリ性やき、アルカリにふれたアントシアニンが紫から青に変わり、麺の黄色とあわせて緑色に見えるっちゅうがよ。


ちなみにアントシアニンたぁ糖と色素の結合物で、イチゴの赤からナスの濃紫まで色調は多様やけんど、共通の特徴として、酸性のもとでより赤うなり、アルカリ性のもとでより青うなる、つまりリトマス試験紙とおんなじやっちゅうがやき。


さらに、その緑色の焼きそばに、ウスターソースをかけて炒めたら、あーらら不思議、麺が黄色に戻るっちゅうがよ。


つまりソースは酸を含んじょって酸性やき、アントシアニンがまた赤方向に戻ったわけやっちゅうがやき。


「第3講 香りの話」にゃあ、加齢臭の話があって、これまた面白いがよ。


かつて加齢臭の本体は、2-ノネナールとされちょったらしいがやけんど、それが最近(2013年)になってマンダムから、中年男性の頭皮からはジアセチルが揮発しよって、これが中年男性特有の脂っぽい臭いの本体やっちゅう報告が出されたっちゅうがやき。


ちなみにジアセチルたぁ、日本酒の大敵である「火落ち」(乳酸菌汚染による劣化)の臭気として、昔っから知られちゅう臭いながよ。


ワシらあ日本酒業界のもんにとっちゃあ知らん人はおらん「火落ち」の臭いが、まさか加齢臭とおんなじやったたぁ、まったく知らんかったがやき!


「第4講 温度の話」じゃあ、古代エジプトでビールをどうやって冷やしよったかっちゅう話が面白かったがよ。


答えは、蒸発熱の原理を使うたっちゅうがやき。


素焼きの甕に水を入れりゃあ、水が表面ににじみ出し、そこで蒸発して、甕と甕の中の水を冷やすき、その甕の中にビールの壷を入れちょきゃあ冷えるっちゅうがよ。


うちわで扇いで甕の表面に風を送って飽和水蒸気の層を吹き飛ばしてやりゃあ、さらに効果的やっちゅうがやき。


脚注も面白うて、12世紀以前のビールは、ホップやのうてハーブやショウガでアクセントをつけよったき苦うなかった、ちなみにジンジャーエールはその後身(エールたぁビールの一種)やっちゅうがよ。


「第5講 お刺身の話」じゃあ、「刺身通のための解剖学」っちゅうんがあって、まず魚の筋肉のあり方について詳しゅう語り、魚の種類と刺身の切り方によって味わいが異なるっちゅうんを、解剖学的に解き明かしちょって、メチャクチャ面白かったがやき。


赤身の魚は、旨みが多いき、細胞を横断するように切ってそれを引き出すべきで(ただし、こう切りゃあダレやすいき供する直前に切る)、白身の魚は、持ち味の歯ざわりを活かすため、細胞を温存するようにそぎ切りにすべきや(切って少々時間が経ったちダレにくいき、フグ刺しを大皿一面に花模様に並べる手間もかけられる)っちゅうか、日本の料理人は昔っからそうしてきたっちゅうがよ。


「第6講 食器の話」じゃあ、食事の容器と食器の話題も豊富ながやけんど、カツ丼誕生の話が一番面白かったがやき。


実はカツ丼の誕生は、トンカツの誕生よりか前やったっちゅうがよ。


つまり、ポークカツレツ➡トンカツ➡カツ丼、やのうて、ポークカツレツ➡カツ丼➡トンカツであり、進化でいやあ、魚➡鯨➡陸上哺乳類やのうて、魚➡陸上哺乳類➡鯨やっちゅうことながやき。


「第7講 宴会料理の話」じゃあ、クリスマスにゃあなんでチキンかっちゅう話題から、フライドチキン解剖学にまで発展し、鳥の骨の構成はティラノザウルスとおんなじやっちゅうことから、「恐竜現存説」(現生の動物で恐竜に一番近いがはニワトリやっちゅう説)まで解説されちゅうがよ。


「第8講 季節の食品の話」じゃあ、バレンタインデーとホワイトデーの話題から広がって、イヌ・ネコらあのペットにチョコレートを与えちゃあいかんっちゅう話まで紹介されちゅうがやき。


食肉目はテオブロミン(チョコレートに含まれるアルカロイドの一種)を代謝できんきに、中毒症状を起こし、場合によっちゃあ死んでしまうき気をつけにゃあいかんっちゅうがよ。


小倉明彦先生の「お皿の上の生物学」・・・この中身の濃さで880円(+税)っちゅうがやき、超お買い得の高コスパ書籍ながぜよ!











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Posted by tsukasabotan at 11:33│Comments(1)
この記事へのコメント
mCdTcxHjVqJgoX
Posted by hCzfRZJtpk at 2020年09月11日 02:41