今回ワシに与えられたテーマは、「日本酒のグルコース濃度について」ながよ。
この「グルコース濃度」についちゃあ、まだまだ知らん酒屋さんが多いっちゅうことで、増田先生からのたっての希望でお話さいていただくことになったがやき。
今回は、20時半から22時までっちゅう遅い時間での開催で夕食も済まいちょったき、ワシが用意さいてもうたがは軽めのオツマミ、「雪印チーズ・コクとうまみ」を「焼き海苔」で巻いていただくっちゅうもんと、「四万十川青さのり入り・つまみのり」で、用意さいてもうたお酒は、「船中八策・ひやおろし」(超辛口・純米原酒)やったがよ。

実はここ最近、ワシゃあ「海苔」の美味しさにあらためてハマっちょって、特に日本酒のツマミとしちゃあ、「海苔」を超えるツマミはないがやないろうかっちゅうて思いゆうばあながやき。
今回は、飲み食いしもってでOKの会やけんど、ワシゃあ講師やき、飲むこたぁできても食べるがはちくとタイミングが難しいろうっちゅうことで、スタート前に一口いただいてしもうたがよ。
「船中八策・ひやおろし」と「コクとうまみ」チーズを海苔で巻いたがを合わせていただき、さらにそこに「追いノリ」として「おつまみのり」も加えていただいたがやけんど、これがホンマにまっこと、こぢゃんと旨いの何の!

チーズの動物性のグルタミン酸の旨味に、海苔の植物性のグルタミン酸&イノシン酸&グアニル酸らあの旨味が加わり、さらに「おつまみのり」の川のりの旨味も加わり、旨味が倍増しまくり、さらにさらにそこに「船中ひやおろし」の熟成した様々なアミノ酸の旨味が加わりゃあ、もはや旨味のフルオーケストラの交響楽団状態で、幸せ気分満開ながやき!

いかん、いかん、セミナーが始まってしまうぜよ。
ZOOMに入室して増田先生とご挨拶し、ちくと待ちよったら次々に参加者の皆さんも入室され、開会となったがよ。
「酒販ビジネス実践会」に加盟されちゅう全国の酒販店の皆さんらあを中心に、10名ばあの方々が集まられたがやき。
酒販店の皆さんは、この時間でも仕事がある方々が少のうないようで、数名の方々が出たり入ったりがあったがよ。
さて、ワシのセミナーのスタートで、今回お話さいていただくがは、日本酒の「グルコース濃度」についてやけんど、「グルコース濃度」らあっちゅうヤヤコシイ専門知識を、何のために獲得するがかっちゅうたら、そりゃあ「お客様の幸せのため」やっちゅうことを、まず絶対に念頭に置いちょいていただきたいっちゅうお話をさいてもうたがやき。

つまり、これからの酒販店は、特に日本酒に力を入れゆう酒販店やったら絶対に、「グルコース濃度」についての知識を持っちょかにゃあ、日本酒でお客様を幸せにするような提案ができんなるっちゅう意味ながよ。
そんな前置きをさいてもうてから、「グルコース濃度」についての解説をスタートさいたがやき。
近年人気の純米酒や純米吟醸酒らあを飲まれて、「日本酒度はプラスやに、やたら甘いがは何で?」っちゅうて疑問に思われたこたぁないかよ?
これまでは、日本酒度がプラスの酒は辛口、マイナスの酒は甘口と言われよったがよ。
けんど、近年はその考え方が全く通用せんなってきちゅうがやき。
それが、「グルコース濃度」の関係ながよ。
近年流行りの純米酒や純米吟醸酒らあは、この「グルコース濃度」が高いもんが多うて、実は全国のメーカーの間じゃあそういうタイプの酒造りは、もはや数年前から常識となっちゅうがやき。

まず、日本酒度は比重で、本当の甘さや辛さの指標じゃあないがよ。これがまず前提ながやき。
ほんで、お米の「でんぷん」は、液化酵素と糖化酵素の働きによって、以下のように変化していくがよ。
「でんぷん」→「デキストリン」→「オリゴ糖」→「ブドウ糖」
お酒に残っちゅう糖分の組成によって、人が感じる甘みは違うがやき。
「デキストリン」は、「でんぷん」に近いき甘うないがよ。
「オリゴ糖」はほのかな甘さ。
最も甘いがは「ブドウ糖(これがグルコース)」ながやき。
つまり、日本酒度がなんぼプラスやち、残糖の構成がブドウ糖が多けりゃあ甘い酒になるっちゅうことながよ。
このような糖化率の高い酒、「グルコース濃度」が高い酒が最近の流行りやっちゅうことながやき。
糖化率を高うするにゃあ、いくつかの手法があるけんど、近年は、高グルコ菌っちゅう麹を使う(生まれつき糖化酵素を大量生産する麹菌)、酵素剤を入れる(糖化酵素そのものを入れる、最も簡単な方法。)らあの手法が一般的ながよ。
日本酒業界の近年のトレンドは、このような高グルコ菌や酵素剤を使うた「グルコース濃度」の高い甘い酒となっちゅうがやき。
特に、全国新酒鑑評会金賞受賞酒は、年々グルコース濃度は高まり、さらに金賞受賞酒は甘い酒だらけとなっちゅうがよ。
こりゃあ、甘みが欠点をマスキングするためで、「グルコ
ース濃度」の高い酒は欠点が指摘されにくいき金賞を獲りやすうなり、「グルコース濃度」の低い酒は欠点が指摘されやすいき金賞が獲りにくいっちゅうんが現状ながやき。
さらに、「グルコース濃度」が高い酒は、高カプロン酸エチル酵母使用による若干の苦味もマスキングでき、その上、飲み込まんと多数を利き酒する審査会じゃあ、格段に有利やと言われゆうがよ。(グルコの高い酒の後に、グルコの低い酒が並びゃあ、「身薄い」「粗い」「味ノリ悪い」等の低い評価になりがちながやき。)
ほんで、鑑評会らあへの出品酒だけやったらまだしも、市販酒の純米酒や純米吟醸酒や純米大吟醸酒らあも、年々「グルコース濃度」が高うなりゆうがよ。
実はこのようなグルコース濃度の高い酒は、一口で「旨い!」と分かりやすうて、特に若者にゃあ人気があるがやけんど、一方で、量が飲めん、1杯で終わってしまう、料理が進まん、らあの欠点も一部で問題視されちゅうがやき。
一般的に「旨い酒」っちゅうて、一くくりで語られるけんど、実は「旨い酒」にゃあ2通りあるがよ。
すなわち、「一口飲んで旨い酒」と「一口じゃあ物足りんけんど、食が美味しゅうなって、ついつい杯が進む酒」ながやき。
けんど、きき酒審査らあの場合は、少量を口に含んで吐き出し、当然料理は食べんと審査すりき、後者の「旨い酒」を評価するこたぁなかなか難しいがよ。
そのため、「SAKE COMPETITION」らあの審査じゃあ、あらゆるコンテストに先駆けて、世界で初めて「グルコース濃度別審査」を採用しちゅうがやき。
これにより、年々全国的に異常に甘い酒だらけとなる市販酒同質化の傾向に、一定の歯止めをかけるこたぁできたがやないかと言われゆうがよ。
けんど、日本中や世界中に新たな日本酒の品評会や審査会らあがあふれ出いて、それらあのほとんど全てが通常のランダムな順序でのブラインドテイスティングやき、「グルコース濃度」の高い甘い酒が有利な状況は一向に変わってないがやき。
しかも、その甘口化の傾向が市販酒にまで飛び火し、市販酒がどんどん甘うなりよって、さらにそういうタイプだっけがえい酒やっちゅう誤解まで生じはじめゆうがよ。
この傾向は、日本酒最大の魅力である地域の個性が失われる方向性ながやき。
全体の同質化は全体の地盤沈下につながるっちゅうんは当たり前の話ながよ。
ほんじゃきワシゃあ、まずは最も影響力がある全国新酒鑑評会から変えにゃあっちゅうことで、一昨年の日本酒造組合中央会の評議員会にて、高知県酒造組合理事長として、「グルコース濃度別か、濃度順審査」の導入を提言さいてもうて、実は本年の「全国新酒鑑評会」から「グルコース濃度順審査」が実現しちゅうがやき。
けんど、一番の問題は生活者、日本酒を購入してくださりゆう一般の方々は、こんな日本酒業界の事情らあ知らんき、このまんまやと「甘い酒=美味しい酒」と思いこんでしもうて、辛い酒は昔の古いタイプの美味しゅうない酒やと勘違いしてしまいかねんがよ。
しかも、高グルコの甘い酒は食べ物が進まん、特に和食、特に刺身らあにゃああんまり合わんき、箸も杯も進まんなるがやき。
和食や刺身に合わんような甘い日本酒だっけが美味しいお酒やと思いこんじゅう生活者は、そりゃあ不幸せやと言わざるを得んろうがよ。
ほんじゃきワシらあは、酒だけ飲んだらちくと物足りんかもしれんけんど、料理と合わせて飲んだら、その料理の素材の良さを出汁のように下から支えて押し上げてくれ、料理が美味しゅうなり酒も美味しゅうなり、ついつい箸が進みついつい杯が進み、交互にやりゃあ箸も杯も止まらんなるっちゅう、グルコース濃度の低い辛口の酒の良さを、お客様の幸せのために、まっとまっとキチッと伝え広めていかにゃあいかんっちゅうことながやき。
だいたいこんなようなお話をさいてもうて、その後も皆さんからのいろんな質問らあに答えさいてもうたがよ。
こうして、「酒販ビジネス実践会」でのワシのオンラインセミナーは、22時ちょい過ぎばあにゃあ、お開きとなったがやき。
増田先生、そしてご参加いただきました皆さん、まっことありがとうございましたぜよ!
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司牡丹酒造株式会社