和食について興味を持たれちゅう皆さんにゃあ、特にご覧いただきたい内容ながやき。
https://shudo-kurogane.jp/shudo/gate02/gate02_15.html
今回は、平成25年（2013年）12月にユネスコの無形文化遺産に登録されちゅう、「和食〜日本人の伝統的な食文化〜」がテーマながよ。
「和食」の中にゃあ、もちろん日本酒も入っちゅうし、和食の美味しさをさらに引き立てる存在が日本酒ながやき、やっぱしワシらあ日本酒業界のもんも、日本酒の知識だけやのうて、和食全般についての知識を持つことも、今後はますます重要になってくるといえるがやき。
【「和食」のユネスコ「無形文化遺産」登録、そして「日本酒」等も！】
ここじゃあ、ユネスコ「無形文化遺産」たぁ、そもそも何ながか、その概要らあをご紹介しちゅうがよ。
また、2013年（平成25年）に登録された、「和食〜日本人の伝統的な食文化〜」の概要や、文化的な特徴らあについて、ご紹介しちゅうがやき。
ほんで、令和2年（2020年）、日本酒等のユネスコ無形文化遺産への登録を視野に、文化庁と国税庁が中心になって調査が開始され、令和3年（2021年）1月18日第204回通常国会の菅総理大臣施政方針演説じゃあ、「日本酒、焼酎などの文化資源について、ユネスコ無形文化遺産への登録を目指します。」っちゅうて語られたがよ。
そっから動きは一気に加速し、同年10月15日、文化審議会が「日本酒、焼酎、泡盛、味醂などの麹菌を使った日本の伝統的な酒造り」の技術を、日本における登録無形文化財とするよう、文部科学相に答申したがやき。
こうして同年12月2日、「伝統的酒造り」は無事無形文化財として正式に登録されるに至ったがよ。
これにより、「日本酒などの伝統的な酒造り」の、ユネスコ無形文化遺産登録への下準備が、全て整うたことになったがやき。
今後最速で推薦や審査らあが成されりゃあ、「日本酒などの伝統的な酒造り」は、令和7年（2025年）にゃあ、ユネスコ無形文化遺産に登録となる予定ながよ。
【和食はどうしておいしくなった？】
続いては、平成26年（2014年）11月26日のNHK総合テレビ「歴史秘話ヒストリア」にて放送された、「和食はどうしておいしくなった！？〜時代の主役たちが育んだ食の遺産〜」っちゅう番組について、ご紹介しちゅうがやき。
「和食の三大革命」として、�〜義離�ッキングで悟る（精進料理）��武士たちの料理ショー（本膳料理）�Ｃ磴竜霓佑�極めた“おもてなし”（懐石料理）っちゅう3つを、詳しゅうご紹介しちゅうがよ。
【「和食」の究極の原点とは？】
「和食の三大革命」をご紹介さいていただいたがやけんど、ほいたらこの三つの中で、「和食」の究極の原点といえるがは、どのあたりながやろうかっちゅうんを、こっからはワシの「個人の意見」としての解釈で、語らいてもうちゅうがやき。
また、ここじゃあ、平成26年（2014年）11月12日にNHK・BS1にて放送された、「和食 魅惑の世界」の第1回「だし〜日本列島を凝縮した味〜」っちゅう番組をご紹介さいてもうちゅうがよ。
この番組じゃあ、室町時代の全国を結ぶ流通網の発達により、日本列島の北の海の海藻（＝昆布）と、南の海の回遊魚（＝鰹）と、山の森の茸（＝椎茸）の三つを見い出し、“だし”が生まれたっちゅうて語られちゅうがやき。
ほんじゃき、“だし”は「日本列島を凝縮した味」やっちゅう訳ながよ。
昆布のうま味は主にグルタミン酸（アミノ酸）、鰹節のうま味は主にイノシン酸（核酸）、干し椎茸のうま味は主にグアニル酸（核酸）ながやき。
ほんで、うま味物質は「うま味の相乗効果」っちゅうて、単独で使うよりか、アミノ酸系うま味物質（グルタミン酸）と核酸系うま味物質（イノシン酸やグアニル酸）を組み合わせることで、うま味が飛躍的に強うなるっちゅうがよ。
ほんじゃき「和食」じゃあ、昆布と鰹節、または昆布と干し椎茸の“だし”を組み合わせて使うっちゅう訳ながやき。
まさにこの「うま味」の発見と「うま味の相乗効果」の発見は、「和食」の生命線じゃと言えるがよ。
……ほいたら、「うま味」自体、それ以前には存在してなかったがやろうか？
ここで「精進料理」のところに飛んで、道元禅師の「典座教訓(てんぞきょうくん)」＜参考：「典座教訓・赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)」（道元 著 全訳注：中村璋八・石川力山・中村信幸 講談社学術文庫）＞の中にゃあ、「六味」っちゅう言葉が登場するがやき。
「苦、酸、甘、辛、鹹（塩からい）、淡」の六つの味のことながよ。
中国じゃあ、五行思想に基づき、味は伝統的には「苦い、酸い、甘い、辛い、鹹い」の「五味」とされたがやき。
道元禅師はこれに「淡味」を加え、「六味」としたと、「歴史秘話ヒストリア」の「和食はどうしておいしくなった！？」でも紹介されちょったがよ。
ちなみに「淡」たぁ、「食物の材料の持ち味をそこなわんように薄味にすること」やと、「典座教訓」の解説文にゃあ書かれちゅうがやき。
ここでちくと補足やけんど、現代における「基本味」（他の味を混ぜ合わせてもつくることのできない独立した味）は、「甘味、酸味、塩味、苦味」の四味に「うま味」を加えた「五味」っちゅうことになっちゅうがよ。
「辛味」と「渋味」についちゃあなんで「基本味」に入らんがかっちゅうたら、これらあは味覚神経やのうて、痛覚や温度覚で感じ取る味やき、厳密な意味じゃあ味やないきながやき。
ほんで再び「典座教訓」に戻り、この書籍をようよう読んでみりゃあ、道元禅師の「六味」の話は、実は中国の書物である「禅苑清規（ぜんねんしんぎ）」からの引用ながよ。
また、道元禅師の時代から少し下った西暦1600年前後の中国の明朝時代に書かれた「菜根譚（さいこんたん）」っちゅう書物にも、「淡」っちゅう味が登場しちゅうがやき。
「菜根譚」（中村璋八・石川力山 講談社学術文庫）にゃあ次の通り書かれちゅうがよ。
「醲肥辛甘（じょうひしんかん）は真味（しんみ）に非（あら）ず、真味は只是（ただこ）れ淡（たん）なり。」
……こりゃあつまり、「濃い味や肥えた味、舌をさす辛い味や甘い味は、本当の味やない。真の味はただ『淡』だけぜよ。」っちゅう意味になるがやき。
ワシゃあ、この「淡」っちゅう味を、単純に「材料の持ち味をそこなわん薄味」たぁ取りとうないがよ。
まっと深い、素材そのもんのスピリッツのようなもんを抽出したような、淡い味わいの中にも複雑かつ精緻なもんが溶け込んじゅうような味が「淡」じゃと考えたいがやき。
ほんで、さらにこの「淡」こそが、実は「うま味」（の初期段階）じゃあないか、と考えちゅうがよ。
中国のこの時代にも干し椎茸や干した海藻らあが存在しちょったき、それらあの素材の持ち味を抽出すりゃあ「うま味」となるし、様々な野菜らあも煮ることにより「うま味」は抽出できるがやき。
けんど、その後の中国じゃあ、禅宗の衰退と共に、この「淡」っちゅう真味の追求は途絶えてしまうがよ。
「禅苑清規」も中国じゃあ散逸してしもうて、日本にゃあ「典座教訓」が残り、「菜根譚」も中国じゃあ消えてしまい、日本じゃあ盛んに読まれたことと同様ながやき。
ほいたら、もともとの「淡」っちゅう味、つまり「うま味」（の初期段階）は、中国が発祥ながかっちゅうたら、そりゃあ違うと思うがよ。
なんでかっちゅうたら、日本にも道元禅師以前から、干し椎茸や干した海藻、さらに鰹節（の原型）も存在しちょったきながやき。
おそらく「うま味」っちゅう言葉はのうたち、「うま味的な味」が存在することにゃあ日本人も気づいちょったと考える方が自然ながよ。
道元禅師が伝えた「典座教訓」、「六味」、そして「淡」っちゅう言葉の登場により、その存在に「淡」っちゅう「名前がついた」がやないろうか。
ほんで、時代を経て室町時代となり、鰹節の「淡」と昆布の「淡」が出会い、“だし”が誕生することになり、「うま味」の相乗効果の発見や、「うま味」っちゅう味の科学的発見につながっていく、ちゅうことながやないろうか。
つまり、「和食」の究極の原点たぁ、「うま味」（の初期段階）である「淡」っちゅう味にある、とワシゃあ考えちゅうがやき。
ほんでその「淡」は、道元禅師により「名前がついた」かもしれんけんど、実はそれ以前のさらに古い時代から、日本人はその存在に気づいちょったっちゅうことながよ。
【日本酒の世界の「淡」とは？】
さて、こっからは日本酒の話にスイッチするがやき。
日本酒の世界にも、「淡」っちゅう言葉が存在するがよ。
「淡麗辛口」の「淡」ながやき。
まず、誤解せんとってほしいがは、ここで「菜根譚」の「真味は只是れ淡なり」を振りかざいて、「日本酒も『淡麗』こそが真の味じゃ！」らあて言いたいわけじゃあないきに、念のため。
道元禅師のいう「淡味」も、「六味」の調和が取れちゅうことが大切であるっちゅう表現の中に出てくるわけやき、「淡味」だけが本物じゃらあて言うてないがよ。
ただし、昨今の食のブームのように、あまりに濃い味やあまりに肥えた味、舌を刺すような辛い味やベタ甘い味らあの「醲肥辛甘」（じょうひしんかん）が過ぎる味は、食べ物やったち飲み物やったち、そりゃあ真味に非ずやと思うちゅうがやき。
ワシがここで言いたいがは、日本酒でいう「淡」も、ただ単に「薄い味」じゃと誤解されちゃあせんろうかっちゅうことながよ。
確かに単に薄っ辛いだけの「淡麗辛口」の日本酒も、存在せんわけじゃあないきに、単純に誤解と断言するこたぁできんかもしれんけんど、少のうたち司牡丹でいうところの「淡」はそうやないと断言したいがやき。
日本酒の場合の「淡」も、まっと深い、素材そのもんのスピリッツのようなもんを抽出したような、淡い味わいの中にも複雑かつ精緻なもんが溶け込んじゅうような味が「淡」じゃとしたいがよ。
そりゃあたとえるやったら、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七つの色の光を1ヶ所に集中して照らしゃあ、最も「淡い」色である無色透明な白色光となるように……。
ほいたら、ただ薄っ辛いだけの「淡麗辛口」と、司牡丹でいうところの「淡麗辛口」との造りの違いは、どこにあるがやろうか。
単純に辛口を造ろうとすりゃあ、「でんぷん→デキストリン→オリゴ糖→ブドウ糖（グルコース）」をどんどんアルコールに変えてしまやぁ比較的簡単にできるがやけんど、それじゃあ前者のただ薄っ辛いだけの酒になってしまうがやき。
淡麗な中に潜むうま味や膨らみと、辛口のキレの良さを、いかにハイレベルでバランスを取るかっちゅう、絶妙なバランスが命になるがよ。
司牡丹酒造の浅野徹杜氏は、この絶妙なバランスを「富士山のように稜線がなだらかで美しい酒」と表現しちゅうがやき。
こりゃあつまり、ただ辛いだけの山も、ただ甘いだけの山も、どちらもヒョロ高い山となり稜線が美しゅうないっちゅう意味ながよ。
たとえば超辛口の場合、薄っ辛い酒になりがちやけんど、「グルコース濃度」が極めて低い超辛口やったち、デキストリンやオリゴ糖らあの他の様々な成分との絶妙なバランスが、なだらかな稜線を感じさいてくれる、そんな超辛口が富士山のような美しさを感じさいてくれるがやと、ワシゃあ受け止めちゅうがやき。
ほんで、そのような日本酒こそが、真の「淡」味を持った「淡麗辛口」であり、そのような日本酒は、酒だっけ飲んだ場合はちくと物足りのう感じるかもしれんけんど、料理（特に和食）と合わせて飲んだとき、料理の素材そのもんの美味しさを、“だし”のように下から支えて押し上げ、グッと引き立ててくれるがよ。
特に、新鮮魚介の美味しさを引き出す効果は絶大であり、ついつい箸が進み、ついつい杯も進み、交互にやりゃあ止まらんなってしまうがやき！
さて、今回のトピックについて、さらに詳しゅう知りたい方は下記をクリックし、「和食の『淡』と日本酒の『淡』」の、YouTube動画やPDF原稿を、是非是非ご覧いただきたいがぜよ。
https://shudo-kurogane.jp/shudo/gate02/gate02_15.html
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司牡丹酒造株式会社
