「どうやら幸福っちゅうもんは、こぢゃんと平凡なことの中にあるがやき。静かな眼、おだやかな心、健やかな体、平穏な日々、そうした状態以外の何もんでもないらしいぜよ。」(井上靖)
昭和文学の方向性を大きゅう変えたと言われる、戦後期を代表する作家のひとりで、文化勲章も受章されちゅう小説家であり詩人の、井上靖(1907〜1991)さんの言の葉ながよ。
人間、誰やち幸福を求めて生きゆうはずやに、その幸福の在り処についちゃあ、ほとんどの人が間違うて思い込んでしもうちゅうがやき。
つまり、幸福は何か特別なことの中にあるもんやとか、幸福はどっか遠いところにあるもんやとか、幸福は非日常的なもんの中にあるもんやとか……ワシらあは何でかしらんけんど、勝手にそんなふうに思い込んでしもうちゅうがよ。
ほんで、それを追い求めて追い求めて、長年努力をするがやけんど、いつまで経ったち、幸福は手に入らんがやき。
そりゃあ手に入らんはずながよ。
何でかっちゅうたら、幸福は何か特別なことの中にあるもんでも、どっか遠いところにあるもんでも、非日常的なもんの中にあるもんでもないきながやき。
井上靖さんの言の葉のとおり、幸福っちゅうもんは実はこぢゃんと平凡なことの中にあるがよ。
静かな眼で物事を見ることができる状態、おだやかでリラックスした心の状態、特に健康面に心配のない体の状態、いつもと変わらん普通の日々を淡々と過ごしゆう状態……そんな平凡なことの中にこそ、幸福っちゅうもんは存在しちゅうっちゅうことながやき。
ほいたら、はたと気づくはずながよ。
幸福は、すでにおまさんの手の中にあることに……