「灼熱の熱さをくぐったもんたぁつゆ思えん静かさで、ここに白磁の壺があるぜよ。」(東井義雄)
兵庫県の浄土真宗東光寺住職で、小学校教師としても奉職し、多くの著作も著した教育者でもある、東井義雄(1912〜1991)さんの言の葉ながやき。
陶器を焼きあげる温度は、800〜1300度っちゅうなかなかの高温らしいがやけんど、磁器を焼きあげる温度は、焼き物の中で最も高い1200〜1400度らしいがよ。
そればあ超高温の灼熱の熱さをくぐっちゅうに、何と白磁の壺の静謐なことかやろうかっちゅうて、この点に東井義雄さんは気づいて、驚きを隠せんかったがやき。
つまり、こういうことながよ。
灼熱の熱さをくぐるような、未曾有のつらい体験をされた方は、その大変な苦労が魂に刻み込まれちょって、普通やったらそのことが全身から滲み出てしまうもんながやき。
ところが、まったくその真逆の人もおるがよ。
灼熱の熱さをくぐるような、未曾有のつらい体験をされちょって、大変な苦労が魂に刻み込まれちゅうはずやに、そんなことらあ微塵も感じさせんと、静謐に淡々と日々を暮らしゆうように見えるっちゅう方も、実際にゃあおるがやき。
そりゃあもしかしたら、前者は陶器のような人で、後者は磁器のような人やと、表現できるかもしれんがよ。
前者も後者も、もちろん素晴らしい人間やっちゅうんは間違いないろうけんど、どちらが強いか、壊れにくいかっちゅうたら、そりゃあ後者の磁器の方やっちゅうことながぜよ。